• 投稿日:2025/03/29
  • 更新日:2025/10/01
カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』:AIが導く未来と人間の選択

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』:AIが導く未来と人間の選択

  • 2
  • -
シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

この記事は約12分で読めます
要約
『AI 2041』は、AIの第一人者カイフー・リーとSF作家チェン・チウファンによる近未来予測書。AI技術が社会をどう変えるのか、2041年を舞台にした10の物語で描く。恋愛、教育、経済、戦争までをカバーするSF的教養書として必読の一冊。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回はカイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』2022年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。


著者:カイフー・リー

元Google中国社長。人工知能学者。
1961年、台湾の台北産まれ。
アップル、マイクロソフトの重役を務めたのち、Google中国の社長になる。
現在は中国のベンチャーキャピタル、シノベーション・ベンチャーズCEO。


著者:チェン・チウファン

SF作家。1981年、中国広東省汕頭市生まれ。北京大学卒業。
Googleに勤務しながらSF短編を雑誌に発表し、銀河賞などいくつかの賞に輝く。


00000.png✅ AIはもはや「魔法」ではなく「現実」である。
✅ 便利と危険は、紙一重で進行する。
✅ 未来は、人間の選択にかかっている。


本書は近未来の技術と経済をテーマにした10編の短編。

どれも2041年の未来を書いたもの。

GAFAMのうち3社でAI開発に関わってきたカイフー・リーがAI解説パートを、Google時代のリーの同僚でいまはSF小説家であるチェン・チウファンが小説パートを担当している。


この十篇は、単なるAIの物語ではなく、人間自身についての物語である。 人工知能と人間社会が正しく手を取り合い、ダンスを踊ることができれば、人類史上最高の成果がもたらされるだろう。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』


人工知能(AI)とは、通常は人間の知性が求められるようなタスクを実行できる知能的なソフトウェアおよびハードウェアのことを指す。

深層学習を使ったアプリケーションとその関連AI技術は、すでに私たちの生活のあちこちに登場している。


本書は多くのAIに関するテーマを教えてくれる。

参考として列挙する。

深層学習 ビッグデータ インターネット 保険アプリケーション AI がもたらす予期せぬ悪影響 コンピュータビジョン 畳み込みニューラルネットワーク ディープフェイク 敵対的生成ネットワーク(GAN) バイオメトリクス AIのセキュリティ 自然言語処理 自己教師あり学習 GPT 汎用人工知能 AI教育 AlphaFold(アルファフォールド) ロボット医療への応用 高ビットに加速される自動化 仮想現実(VR) 拡張現実(AR) 複合現実(MR) ブレイン・コンピューター・インターフェース 倫理および社会的問題 自動運転車 完全自動運転 スマート都市 量子コンピューター ビットコインの安全性 自律兵器 AIに置き換えられる仕事 ベーシックインカム AIが苦手な職種 職業の置き換えに備える3R 一般データ保護規則(GDPR) 個人データ Federated Learning(フェデレーテッドラーニング) 信頼実行環境(Trusted Execution Environment)を使ったプライバシー保護 新しい経済モデル 貨幣の未来 シンギュラリティ

参考程度に


AIに関する単語だけでこんなにある。

AIという単語は社会に馴染んできた。

しかし、氷山の一角に過ぎないことがよくわかる。


AIがもたらすどんな未来が、どんな予想があるのか?

是非、知っておこう。


テクノロジーが描く「もうすぐ」の世界

2c146c4a-bd39-42bf-875a-1093a455f162.png

AIは臨界点を突破し、象牙の塔から出た。
ゆっくり進歩する時期は終わったのだ。深層学習を使ったアプリケーションとその関連AI技術は、すでに私たちの生活のあちこちに登場している。
本書が読者の目に触れる2021年後半以降には、AI世界秩序での予測は大層現実化している。
そろそろ、また新しいフロンティアに目を向けなくてはならない。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』

0.png⇒ AIは、すでに社会の根幹に入り込んでいる。

医療、教育、金融、エンタメ、都市開発。

AIは多くの業界で主役を張る準備を終え、社会インフラへと溶け込んでいる。


AIは人の手でプログラムされていると思われがちだ。

例えば、「犬は〇〇と△△と犬種があり、見分け方は…」というような特定のルールやアクションを人間が教え込んでいると誤解される。

しかし、実際の深層学習は、このような人間が作った外部的なルールがなくても、うまく働いていると本書では語られる。

AIの頭脳である深層学習は、人間の脳とは全く異なることを理解すべきだ。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』


人間が手ほどきをするのではなく、とにかく一定の事象を大量に入力層に入れ、正解を出力層に設定しておく。

すると、その間のネットワークは、与えられた入力から正解を導き出す可能性を最大化しようと自分を訓練する。

コンセントを抜かぬ限り、この記事を読んでいる間にもAIは世界中の誰よりも(意志を持つかどうかは不問)真摯に自己訓練に励んでいる。

年齢を重ねて、腰や背中が妙に痛くなることもない。

なんということだろうか。


フェイクとの戦いと堂々巡り

cda31c6a-ef49-412f-8450-214a54a9d151.pngAIを使用した作品はAIを利用した表記が求められる。

政治や経済に混乱を招くようなフェイクニュースを作るAIとフェイクニュースかを判断するAI。

さらにそれが正しいかを判断するAIと・・・堂々巡りになり、結果人間が活用される。

しかし、その人間に正当性や信頼があるかは別の話で、結局根本的な解決にはならない。

その人間が正しいかを判断するAIもいるかもしれない。

ただ、人間が関わらない部分の処理速度が速くなっていく。

試行回数が増えれば、改善点が生まれ、消えていく回数も増える。

人類が滅ぶまでには、いつか解決する問題かもしれない。

ディープフェイクの作成とその検出のいたちごっこは軍拡競争と同じだ。
コンピューターの計算力をより多く使える方が勝つ。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』

0.png⇒ フェイクを裁くAI、裁く人間、そしてまたAI。

ディープフェイクを見抜くAI、さらにその正しさを判断するAI。

そして、そのAIの正当性を見抜く人間…。

この無限ループに未来は委ねられる。


0000000.png102.png出版者:東洋経済新報社「AI時代に食える仕事・食えない仕事」

自動化の影響は大きく4種に大別される。

スクリーンショット_2024-10-21_230603.png画像元:東洋経済新報社 「AI時代に食える仕事・食えない仕事」


266.png佐々木ゴウ著「AI時代のWebライター1年目の教科書」

✅ AIとWebライターの違いは「責任」と「深み」にある。


⇒ 単純に利用しただけでは、AIもいずれは淘汰される。

⇒ 人間の強みとは「エラーへの対処」「信用」「既得権益」


データと欲望のメカニズム

7b313b12-bf73-4a45-823e-ccd51f35ca91.png

巨大テック企業は膨大なデータを蓄積しており、その多くはユーザーの行動によって自動的にラベル付けされている。
そして、ユーザーの行動は企業経営において最大化すべき指標(閲覧数やクリック数)と直結している。
これだけ条件がそろっていれば、そのアプリやプラットフォームは「金のなる木」になる。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』

0.png⇒ データは「金のなる木」へと進化した。


AIが急成長した背景には、私たちの行動データがある。

SNSや検索履歴は全て“肥料”である。

深層学習で最適化された利益構造が築かれている。


0000000.png234.png稲田修一著『ビッグデータがビジネスを変える』

「ビッグデータ」とは、大量の情報を統合的に分析し、価値ある資源として活用することで、新たな可能性を生み出す手法。

膨大な情報そのものは単なるデータだが、それを的確に利用することで初めて価値を持つ。


ビッグデータとAIの相性は良い。

◆AIの強みとは何か?

❶100万の写真から1枚の一致する写真を選ぶこと
(最適化、マッチング)

❷ユーザーごとに購入確率の高い商品の表示
(条件に応じたカスタマイズ)

この2点について、人間を凌駕し、電気とパソコンが壊れない限り、24時間フルで働くことができる。

人間よりも安く、文句も言わず、人間ひとりを生産するよりも簡単に増やすこともできる。


AIの頭脳は、定量的最適化やマッチング、状況ごとのカスタマイズについて非常に有利な点が多い。

このような強みを深層学習が持つことを踏まえれば、AI技術の最初の受益者がインターネット業界の大手企業だったのは当然といえる。


人間は、AIに何を託すべきか

0d15460b-ad38-4919-8bf8-9cb63c5b95ae.png私たちは単純に仕事を奪われるのか?

本書では人間の”再訓練”が必要になると予想している。

人間の労働者をどのように再訓練するか。
変化に労働者を備えさせ、雇用をつくるために必要なのは「リスキリング」「リキャリブレート」「ルネサンス」の3Rである。
これはAI経済革命の最大課題に対応するための、途方もない努力の一部となる。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』

■ リスキリング(再学習)

AIに代替されにくい能力(戦略、想像力、共感、器用さなど)を習得する。

大規模に行う場合は国家主導で行う必要があるのが難点。

■ リキャリブレート(再調整)

業種ごとにカスタマイズされたAIツールが導入され、仕事の効率と精度が向上している。

人間はAIが苦手な「共感」「判断」「対人関係」を担う役割分担が進む。

医師などの専門職も、AI診断を用いて人間的ケアに時間を割く方向へと再定義される。

AIは「ツール」として明確に利用され、業務で使用する環境が整備される。

■ ルネサンス(創造性の再興)

AIによって人間の自由時間が増えることで、人々は芸術・学問・文化活動に力を注げるようになる。

芸術家・作家・科学者・教育者などはAIをツールとして活用し、創造的活動の質を高める。

教育現場でもAIを活用し、生徒一人ひとりの好奇心・才能・感情知能を伸ばすことが可能になる。

技術進化は、かつてのルネサンス同様に、人間の潜在能力を引き出す触媒となる。

「私は政治と戦争を学ばなければならなかったが、それは息子たちに数学と哲学を学ぶ自由を与えるためだった。息子たちは数学・哲学・地理・自然史・船舶工学・公開学・商業・農業を学ばねばならない。それによって、その子供たちに絵画・詩・音楽・建築・造形・製織・製陶を学ぶ権利を与えねばならない。」

アメリカの第2代大統領ジョン・アダムズ


0.png⇒ 結局、最後に頼るのは“人間の価値観”である。

⇒ 「AIとの共存」が最高の成果を生む。

⇒ AIを知ることは「人間とは何か」を知ることである。


AIがいかに優れていても、「正しさ」を決めるのは人間。

されど、「正しさ」は人間の数だけ存在する。

技術が進化するほど、倫理と判断の重みが人間に返ってくる構図になる。


著者たちは問いかける。

人類はAIに支配されるのか、それとも共に踊るのか?

未来を選ぶのは私たち自身だと。


まとめ

リベシティ用サムネ (39).png✅ AIはもはや「魔法」ではなく「現実」である。
✅ 便利と危険は、紙一重で進行する。
✅ 未来は、人間の選択にかかっている。


⇒ AIは未来を創る鏡。

⇒ 世界のエネルギーコストを劇的に引き下げられたとき、AIなどのテクノロジーは「第四の産業革命」をもたらす。


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆_.png

蛇足 【個人(クロマサル)の感想】

電力コストが大幅に下がることで、水、原材料、製造、計算処理、流通など、電力消費の大きい製品・サービスのコストが下がる。


私は工作機械というゴリゴリの生産現場にいたからこそわかる。

生産は、有限の資源や有毒な原料(石油、鉱物、その他の化学物質)を使わず、自然界に豊富にある安価な基礎的物質(光、分子、シリコンなど)を使う方向に移行していく。


AIと自動化によって、生産における最後の原価要素である人件費も大幅に削減される。

電力・原材料・生産コストが歴史的な速度で低下すると、その先に見えてくるのは「働く必要がなく、何でもただで手に入る世界」だ。


衣・食・住といった基本的な生活コストがほぼ無料になり、「仕事はしたい人がするだけ」という時代。


現在の経済理論は「誰かの貧困」を前提としている。

従来の経済モデルも、貨幣制度も無効化される。

確実に新しい経済モデルが必要になるだろう。


何故か?


仮に現在の資本主義で進んだ場合...。

AIや機械を買える者がより稼ぎ、より拡大できる状態は更なる格差を産む。

格差の拡大(独り勝ち)は長く見れば、お金持ち自身の寿命を減らす要因になる。

「誰かの貧困」を前提としているのだから、行き過ぎれば「誰か」は生きていけなくなり、「次世代」へ相続する前に淘汰される。

まさにゲーム理論だ。


過去の歴史から、社会主義や共産主義は、資本主義の代案になれなかった。

1971年のノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者サイモン・クズネッツの言葉を借りるなら…。

「世界には4つの国しかない。先進国と発展途上国、そして日本とアルゼンチンである。」

資本主義と富の再分配による社会保障のハイブリッドが、今のところの結論である。


また、AIは無形資産だ。

どこにでも持ち運ぶことができ、増やすことも、コストが限りなく少ない。

金や土地といった現物資産は持ち運びが容易ではないが、インフラが破綻しても「価値がつく信用」がある。


もし貨幣の本質が「信用」なら、「資本主義」から「信用主義」に変化するかもしれない。

「価値の尺度、交換、貯蔵」がほぼ無価値になれば、最後に残るのは「信用」ではないかと。


私の考える「信用主義」は例えるなら、超巨大企業が社員のために用意した備品のようなもの。

もしくは、幼稚園、保育園のおえかきで自由に使っていい画材や絵の具。


"節度を守れば"いつでも持っていって、どのように使ってもいい。

備品は、あらゆる衣食住に適用された社会。


自己実現の活動には「積み上げた信用」がものを言う。

「稼ぐため」ではなく、「創造、創作活動」に近い概念になると予想する。

与えられるのは「評価・名誉」と「信用」だけ。

今だけ、金だけ、自分だけの「個人主義」はいずれやってくる「信用主義」のための布石であると信じたい。


「持続可能な職業を通じた豊かな生き方」

その伝統的な生き方をいつ奪われるかは、AIのみぞ知る。

ただできることなら、私が生きている間に「魔法の時代」を目にしたいものである。

必要なのは経験から学べる機械だ— アラン・チューリング

充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない— アーサー・C・クラーク

他人を真似て完全に生きるより、不完全でも自分の運命どおりに行くほうがよい— バガヴァッド・ギーター第三章第35節

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』


490677b4-890f-442a-ad8d-a4194dae8ba1.pngこの本は「人間とは何か」を深く考える機会を提供してくれる。

バナー (57).png

ブックマークに追加した記事は、ブックマーク一覧ページで確認することができます。
あとから読み返したい時に便利です。

シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

投稿者情報

シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

イルカ会員

この記事に、いいねを送ろう! 参考になった記事に、
気軽にいいねを送れるようになりました!
この記事のレビュー(0

まだレビューはありません