- 投稿日:2025/10/31
初めまして!シロマサルです。
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今回は黒川伊保子著『孫のトリセツ』(2024年発行)をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:黒川伊保子(くろかわ いほこ)
脳科学・人工知能(AI)研究者・感性アナリスト。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より(株)感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SOYJOY」など、多くの商品名の感性分析を行う。
✅ AI時代に必要なのは「感じて表現できる脳」
✅ 祖父母が孫の「心理的安全性」を守るキーパーソン
✅ 叱るより「受け止める」ことが、創造性を育む
生成AIと呼ばれる人工知能が、一般のビジネスシーンに彗星のように現れて、とうとう本格的なAI時代に突入した。今の子どもたちは、私たちには想像もつかない世界を生きていくことになる。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
黒川伊保子氏は、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元にベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』を書いた人物である。
「孫はなぜこんなにかわいいのか?」
この素朴な問いに脳科学で答える。
そして同時に、AI時代の子育てに必要なのは「躾」よりも「共感」だと語る。
叱って育てる20世紀型の教育から、感じたことを受け止める21世紀型へ。
祖父母の役割は「甘やかすこと」ではなく、「安心の基地になること」。
本書は、未来の子どもを育てる“脳の取扱説明書”である。
『孫のトリセツ』
子や孫が飲み物をぶちまけることは人類が何度も経験してきたことだ。
ここではいきなり結論を言おう。新しい世界で活躍する人材は、甘やかされて育つ必要がある。「いつだって気持ちを受け止めてもらえる」という安心感のもと、脳の中に浮かんだイメージの断片を無邪気に出力する癖を脳につけておかないとならないのである。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
AI時代の子育ては“いい子”をつくらない
“完璧な優等生”は他者のエゴから生まれる。
AI時代には、そんなわけにはいかない。「いい子」に育てると、残念ながら使えない人材になってしまうからだ。汎用の優等生の知識はAIが持っている。歯車人間の役割もAIがする。人間に残されるのは、個性を発揮すること。その脳にしか感じられないこと、その脳だからこそ生み出せることばが価値を生む時代になったのである。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
⇒ 「いい子」はAIには勝てない。人間らしさが価値になる。
20世紀の教育は、「上の言うことを聞く子」を理想としてきた。
規律や忍耐を重んじる社会では、指示に従い、正確に実行することが最も評価されたからだ。
だが、AIが登場した今、その“完璧な優等生”の役割はすでに機械が担っている。
AIは、命令に忠実で、正確で、疲れを知らない。
そのため「上の言葉を疑わず、死にもの狂いで遂行する人間」は、AI時代にはもはや必要とされない。
黒川氏は言う。
「感じることを恐れず、自分の感情を表に出せる脳こそ、これからの人間に必要だ」と。
頭ごなしに叱る教育は、子どもの脳に“従属の回路”を刻む。
「感じたことを抑え、正しい答えを言う」ことを繰り返すうちに、脳は想像力を閉ざしてしまうのだ。
それに対して、自由に発言し、失敗しても受け入れられる環境で育つ子どもは、自分の中に浮かんだ“違和感”を言葉にできる勇気を持つ。
それこそが、AIには真似できない人間の能力──「創造性」である。
AI時代において“いい子”とは、「何も言わない子」ではなく、「感じたことを表現できる子」なのだ。
祖父母こそ“心理的安全性”の守護者
深い悲しみのときに寄り添いやすい立場であれ。
ここ数年、企業の人事部で「心理的安全性」というキーワードが話題に上っている。グーグルが4年にも及ぶ社内調査の結果、効果の出せるチームとそうでないチームの差はたった一つ、心理的安全性(Psychological safety)が確保できているか否かだ、と言い切ったからだ。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
⇒ 孫に「否定されない時間」を与えるのが、祖父母の使命。
親が子どもに厳しくなってしまうのは、本能によるものだ。
人間の脳は生殖期に「次の世代を成功させたい」という焦燥と責任感に支配される。
このため、子どもが思い通りに動かないと、親は苛立ちや不安に襲われやすい。
だが、祖父母は違う。
生殖本能の枠を超えた脳は、もはや「自分の遺伝子を残す焦り」から自由であり、
その分、他者を受け入れる力が格段に高い。
たとえば、孫がミルクをこぼしても、祖父母は「大変!」ではなく「きれいなミルクの海だね」と笑って受け止められる。
その“余裕”こそが、孫の心に「自分は受け止めてもらえる」という安心感を与える。
この安心感は、脳に深く刻まれ、一生ものの自己肯定感を形成する。
黒川氏は「心理的安全性」という言葉で、この状態を定義している。
それは「どんな言葉を発しても、否定されない空気」のことだ。
Googleが世界中のチームを調査して導き出した“最強の組織条件”が、まさにこれである。
人間のコミュニケーションには、2本の通信線がある。
「心の通信線」と「事実の通信線」だという。
心は受け止めて、事実はクールに進めるのが、対話の達人である。
「わかるよ、君の気持ち」と受け止めたあと、「でもね、相手にしてみたら、受け入れがたいかも」とダメ出しをし「こうしたら、スムーズだったんじゃない?」とアドバイスをする。他人にそれができる人でも、家族には、いきなり「何やってんの。お前も〇〇すればよかったんだよ」とダメ出しする人が多い。前者は、心理的安全性が確保される対話、後者は心理的安全性が損なわれる対話ってことになる。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
祖父母が家庭に心理的安全性を持ち込むことで、子どもの脳は安心して発想を広げられる。
イラつく親の代わりに、孫の「なぜ?」を受け止めるのが祖父母の役割だ。
「どうして宿題をしないの?」ではなく、「どうしたの?何かあった?」と尋ねるだけで、孫は「自分を信じてもらえている」と感じる。
祖父母は、家庭という小さな社会における“最後のセーフティーネット”である。
その穏やかなまなざしが、未来を創る発想の土台になる。
読書が孫の脳を育てる──感性と想像力の筋トレ
読書はいつでもお手軽にできる挫折だ。
読書は、子どもの脳育ての最重要アイテムと言っても過言ではない。 家の中を心理的安全性で満たすと、子どもたちの感性は、繭で守られることになる。けれど、いったん外に出れば、心ない人たちの悪意に触れる。その落差に打ち勝つためには、悪意に触れる経験が必要だ。それを補ってくれるのが、読書なのである。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
⇒ 読書は「悪意と勇気を安全に体験できる装置」。
黒川氏は、「読書こそ、子どもの脳を強くする最高の知育」と断言する。
物語を読むことで、子どもの脳は他者の感情をシミュレートし、“自分ではない誰か”の痛みや喜びを疑似体験できる。
特に9〜11歳は「感性のゴールデンエイジ」と呼ばれ、この時期に読んだ物語が、脳に“人生のモデル”として刻まれる。
主人公が裏切られ、苦しみ、立ち上がるストーリーを通じて、子どもは現実の挫折を乗り越える力を自然に身につけていくのだ。
映画やアニメも刺激的だが、読書には決定的な違いがある。
登場人物に顔がないため、読者は主人公に自己投影しやすく、「自分だったらどうするか」を考える主体的な体験が得られる。
動画は音声も、字幕も、映像もついている。
意味や理解に注力しやすいために有効な情報収集手段ではあるが、人間の脳みそを使う領域が少ないのだ。
脳は、夜眠っている間に、昼間の体験を何度も再生して咀嚼し、知恵やセンスに換えている。「脳内で再生して取り込む」以上、実は実体験だけじゃなく、心動かされた読書体験もちゃんと知恵やセンスに換えている。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
このプロセスが、AIには不可能な“想像力と共感力”を育てる。
そして何よりも大切なのは、大人が本を読む姿を見せることだ。
祖父母が本を手に取り、夢中で読んでいる姿こそ、子どもにとって最高の教育になる。
「読書が楽しい」と伝えるのではなく、「読書を楽しむ背中」を見せること。
それだけで、孫の心に“知的な安心感”が芽生える。
家庭に小さな本棚を置き、物語の世界に触れる習慣をつくる。
それが、未来の孫の“脳の筋肉”を育てる最強の投資になる。
昔は少数派だったけど、今やほとんどの親が読書なんてしない。
スマホは延々と使っているけどね。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』

エイミー·C·エドモンドソン 著『恐れのない組織』
教授の論文と書籍が引用された総回数はなんと5万回以上!!🧐
研究の世界において「引用」されるということは、読者が学問を進めていくうえでの足掛かりであり、被引用件数が大きいほど注目されていて、信用度が高い論文であると言える。
「論文の価値」は引用の回数や頻度によって決まるともいわれる。
つまり、説得力のある結論と言い換えても良い。🧐
心理的安全性は集団の大多数が共有する雰囲気から生まれる。
つまり、「ここではなんでも言える。心おきなくリスクがとれる」と感じる雰囲気のこと
心理的安全性はチームの生産性を向上させる。
彼らが目立つことも、間違うことも、上司の気分を害することもしたがらないからだ。 知識労働が真価を発揮するためには、人々が「知識を共有したい」と思えるが必要なのに、である。
エイミー·C·エドモンドソン 著『恐れのない組織』
エドガー・H.シャイン、ピーター・A・シャイン著『謙虚なリーダーシップ』
本書は、組織心理学の分野に多大な影響を与えてきたエドガー・H.シャイン氏の半世紀にわたる研究の集大成と位置付けられている。
20世紀から21世紀にかけて経済界に最も影響力のあった経営思想家であるP·F·ドラッカーはこう言っている。
『凡人をして非凡なことをなさしめる』ことが組織の目的である。
謙虚なリーダーシップは1つの完成形である。
リーダーシップは、あらゆる組織のあらゆる場所、あらゆるレベルに存在すると思うのだ。リーダーシップとは、ヒエラルキーにおける二次元(トップダウン)の関係でもなければ、「高い潜在能力」を持つ個人の並外れた才能でもなく、人のつながりが複雑に組み合わさったものだ
エドガー・H.シャイン、ピーター・A・シャイン著『謙虚なリーダーシップ』
決して、組織だけの話ではない。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
「最近は何でもハラスメントと言われるから、関わらないようにしている」
「ハラスメントに関わらない」という意味で“安全”と思われがちだが、むしろ「無害であろうとして無責任になる」リスクを孕んでいる。
著者は明言している:“関わらないことこそ最大のリスク”である。
実は、部下と積極的に関わらない、放任型の上司がいる職場では、パワハラが発生しやすいことがわかっています。部下と関わろうとしないことが、むしろパワハラを誘発してしまうのです。このように、パワハラ対策やパワハラにならない部下指導は、個々人の経験や勘を頼りに行っていると、知らず知らずのうちに誤った対応になりがちです。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
まとめ
✅ AI時代に必要なのは「感じて表現できる脳」
✅ 祖父母が孫の「心理的安全性」を守るキーパーソン
✅ 叱るより「受け止める」ことが、創造性を育む
生成AIがビジネス利用されるようになった今、生成AIを使う人たちの「問いを立てる力」が問われている。これを受けて、日本の教育に「問いを立てる力」が足りないと指摘する人も増えてきた。私も、問いを立てる力は、AI時代を飛び越えていく翼だと思っている。好奇心+発想力+対話力=問いを立てる力。つまり、脳の感性の総合力だもの。ただし、問いを立てる力は、学校教育で手にするものじゃない。家族との会話で育むものだと、私は考えている。
黒川伊保子著『孫のトリセツ』
⇒ 「感じる力こそが、AI時代を生き抜く鍵」
まったく別の書籍で、1976年に刊行されたリチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』では、生物は利他的に見える行動をとることがあるが、それは自らの遺伝子の生存に有利に働くからとしている。
実際に利益を受け取っているのは、種でも集団でもなく、厳密には個体でもない――「遺伝子」こそが利益を受け取っている張本人と語っている。
遺伝子は私たちを「乗り捨て」、生き続けるのであれば、「未来に期待して今日よりも明日を良くする」という考え方は、別に子や孫に限った話ではない。
個人、集団、組織、家庭であろうと、穏やかに過ごしたいものだ。
「今」をよりよく生きるために、「甘やかす勇気」を持て。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆
