- 投稿日:2025/12/03
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
AIの未来を語るとき、サム・アルトマンの名を避けて通ることはできない。
ChatGPTを率いた男は、なぜわずか7年で世界の中心に立てたのか?
彼の頭脳の裏には、「理想」と「現実」、「献身」と「狡猾さ」の二面性が潜んでいた。
今回は、小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』2024年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
筆者:小林雅一
KDDI総合研究所リサーチフェロー。情報セキュリティ大学院大学客員准教授。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭を執った後、現職。
✅ 成功の裏には「狡猾な政治力」と「理想主義の崩壊」がある。
✅ AGI開発は技術よりも「人間の感情」に左右される。
✅ サム・アルトマンは“光と影を使いこなす”現代のリーダーである。
本書はこのOpenAIにマイクロソフトやグーグルをはじめキープレイヤーによる生成AIの開発ストーリーである。
これらビックテックに勢いのあるスタートアップ企業なども交えた企業ドラマであると同時に、OpenAIのアルトマンCEOやそのライバルとなるイーロン・マスク、さらにはビックテックの経営者など個性豊かな人物たちが繰り広げる人間ドラマでもある。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
本書は、OpenAIの成功を“奇跡”ではなく、“人間の野心と感情が織りなすドラマ”として描き出す。
AIが膨大な知識を学び人間並みになるには、学習素材となる既存メディアや動画の著作権問題という壁は避けられない。
有名人の声や見た目、キャラクターといったIP{知的財産(Intellectual Property)}をどこまで保証するのか?
NTT西日本が10月27日に打ち出した声の知的財産権を保護しながらAI音声の活用を促進する新プラットフォーム「VOICENCE(ボイセンス)」
ソニーとKADOKAWAの資本業務提携や政府や文化庁によるガイドラインもAIの台頭によって強化せざる負えない状態となった。
『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
ついに私たちはその箱を開けた。
OpenAI社CEO(最高経営責任者):サム・アルトマン
引用画像:Wikipedia(サム・アルトマンは左端の人物)
2025年2月、首相官邸にて孫正義氏と一緒に面会している。
8歳の時点でコンピューターの世界に興味を持ち、19歳のとき、位置情報共有サービス「Loopt」を共同設立・CEO就任。
このサービスはその後Green Dot Corporationに買収される。
2011年にスタートアップ・インキュベーター「Y Combinator」に参画し、2014年に代表に就任。DropboxやAirbnb、Redditなど多数の有名企業を支援した実績がある。
アメリカ合衆国の起業家兼投資家でプログラマー。
OpenAI社の最高経営責任者でYコンビネータの元代表である。
OpenAIを営利企業化してしまえば、「単なる一企業ではなく、人類全体の利益に貢献する」という設立時のミッションに背くことになる。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
OpenAI設立は2015年。
イーロン・マスクやイリヤ・サツケバー(コンピューター科学者)らと共に人工知能の安全な開発と普及を目指すために「OpenAI」は設立された。
つまり、OpenAIのスポンサーがイーロン・マスクのテスラだった。
しかし、とにかく成果を求める姿勢が「OpenAI」の職員達と合わずにマスクは資金提供を打ち切ることに。
AIには巨大なデータセンターやクラウド・コンピュータの利用料でどうしても巨額の資金が必要だった。
そこで、2019年3月に非営利団体(OpenAI.Inc)を上部組織として維持しつつ、その下に営利企業(OpenAI LP)を設立した。
明らかに歪な統治体制であるものの、OpenAI LPの会社が発行する株式の見返りに資金力のある大手IT企業が巨額の資金を調達できるようになった。
上の写真を見ればわかると思うが、ソフトバンクグループ株式会社も2025年4月1日に最大400億ドル(約6兆円)の追加出資に最終合意している。
参考外部サイト:OpenAIへの追加出資に関するお知らせ
巨額の資金と四六時中学習する機会を手に入れたAIは急速に進化していくことになる。
▼OpenAIの奇跡は「理想」ではなく「危機感」から生まれた
この物語はここから数年後の未来さえも序章にすぎない。
日頃「一企業ではなく人類全体に貢献するAI」というミッションを掲げる集団などまずお目にかかることはないし、そんな現実離れした目標に向かって1日18時間も働く技術者(研究者)達にもそれまで会ったことはなかった。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
⇒ 奇跡は信念ではなく、焦燥と野心の産物である。
OpenAIの創業期は、理想ではなく“切迫感”から始まった。
当初の事業計画は「まるで小噺のよう」と形容されるほど非現実的でGoogleとの差は圧倒的だった。
資金も人材も足りず、創業メンバーでさえ「最初は途方に暮れた」と語るほどだ。
しかし、この「不安と劣等感」こそがアルトマンを動かす原動力となった。
彼は、非営利という理念を掲げつつ、裏では加速的な営利化へと舵を切る。
理想を保ちながら現実的な資金調達を進め、Microsoftとの提携で一気に体制を拡大。
「安全性よりもスピード」を優先した決断が、わずか7年でChatGPTを誕生させる原動力となった。
アルトマンを「人たらし」と呼ぶのは失礼かもしれないが、とにかく議員達からの受けは良かったようだ。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
この成功の裏には、冷徹なリーダーの計算がある。
理想を信じる者が組織を作るのではない。
追いつめられた者だけが、理想を現実に変える覚悟を持てる。
OpenAIの奇跡は、「正しい理念」ではなく、「野心と焦燥の化学反応」から生まれたのである。
▼アルトマンの二重性──理想家か、権力者か
たまたま彼だっただけさ。いつか誰かがそうなっていた。
AIの可能性と危険性に関する質問に対し、アルトマンは「この技術(AI)が間違った方向に進めば途轍もない惨事につながると思います。我々はそれを公に認めると同時に、そうした惨事を未然に防ぐために政府と協力していきたいと思います」とそつなく答えた。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
⇒ 理想と狡猾さ、その両方を持つ者だけが頂点に立つ。
小林雅一氏は、アルトマンを「自己顕示欲と狡猾さが同居するリーダー」と評する。
かつて、シリコンバレーで2万人の知己を持つと豪語した人物から「正気の人間の中では1番の野心家」と評された
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
一見穏やかなエンジニアの顔の裏には、冷静に人心を操る政治家のような計算があった。
彼は「人類の未来のためにAIを普及させる」という崇高な理想を掲げながらも、その実、組織を掌握するために、戦略的に“混乱”を利用していた。
OpenAIの取締役会は、AIの安全性を守るために設計された「特殊な非営利構造」を持っていた。
しかしアルトマンは、その理想を“外側からではなく内側から”崩した。
彼の「加速主義」は、理想を掲げる者たちを置き去りにし、「行動の速さこそ正義」とする現実主義を組織に根付かせた。
そして2023年、CEO解任劇が起こる。
この時点でアルトマンは、従業員や投資家からの圧力に耐えきれなくなった取締役会が譲歩する形で、自分がCEOに復帰すると予想していた。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
原因は計画的な陰謀ではなく、「対立を煽って人心を操作する不快なペーパーカットの連鎖」が引き起こした“感情の爆発”だったと著者は記す。
つまり、技術の頂点に立つ組織であっても、最終的に支配するのは人間の感情だ。
アルトマンは一度失脚するも、わずか数日で復帰し、より強い権力を得た。
敗北を恐れぬ狡猾さこそ、彼を「理想を裏切りながらも結果を残す」リーダーへと押し上げたのだ。
OpenAIの研究者をはじめ従業員達は、それまでアルトマンCEO配下でChatGPTやGPT-4を開発してきた自分たちの仕事に誇りを感じていた。
「今の我々は歴史に残るような凄い事をやろうとしている」という実感があった。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
▼AI時代の正義とリーダーシップ
ついに私たちも電気ヒツジの夢を見るか?
従来「著作権の侵害」とは基本的に「他人の作品を無断で複製・公開・配布したりすること」であって、他人の作品から学んで新しい作品を創り出すことではないとされてきた。生成AIにもそのような考え方が適用されるべきだ、とアルトマンのようなAI開発者側は訴えているのである。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
⇒ AIの時代に問われるのは、倫理ではなく「人間の脆さ」である。
OpenAIが掲げた理想──AIの安全性と倫理的制御──は、人類の希望だった。
だが、現実のガバナンスは「理念」ではなく「感情」によって崩壊した。
OpenAIの取締役会はAIの安全を訴え、アルトマンは社会への迅速な普及を望む。
両者の対立は次第に理論ではなく感情の衝突へと変わり、最終的には理想を支えるはずの組織そのものが、人間の弱さによって崩れ去った。
「AIガバナンスの理想が、最も人間的な感情によって破綻する」
AIという超知能を制御しようとする我々人類は、その最前線で「理性よりも感情が勝つ」という構造的限界を露呈したのだ。
画像生成AIの出力する画像がクリエイターの作品と全く同じかどうかというのはいつまでも議論されている。
世間の反応からすれば、「ズルい・不公平な格差」というのが大方の意見である。
数分で人の心を動かす絵を描くために、数年以上もの研鑚やスタイルを身につけてきたのが模倣され、10年もしないうちにその精度は間違いなく人間を追い抜くことはわかりきっている。
特に画像だけでなく動画にも影響は出始め、Sora2で生成された著名人や人気キャラクターの動画が、 SNSで拡散され大きな問題となった。
逆に生成AIを用いて、オリジナルの「映像&音声ともに100%生成AIによる長編映画」や「YouTube動画」で稼いでいる人間もいる。
生成AIという技術が普及した以上、「使ってはいけない」という世界全体でのルールが定められない限り、国ごとの人間が想像する使い方をやめさせることはできないだろう。
AIの優位性が高まれば高まるほど、「使わない方が損」という心理効果が生まれてくる。
どのみち、軍拡競争と同じ方向になると私は思う。
現代は物理的な破壊ではなくても、データ化された資金の盗難やサイバー攻撃によるインフラの破壊もできるようになるだろう。
独裁国もAI生成の研究ができるようになれば、セーフ回路のない攻撃型AIモデルを作ることも可能だ。
これは国だけではない。企業も同じだ。
特殊知識(専門技術)をもつブルーカラー(肉体労働者)の価値はより高まっている。
Amazonが1万4000人の従業員を削減する発表をしたのも同じ。
参考外部サイト:日本経済新聞
おいしい寿司の画像や映像はすぐに作れても、人々を感動させるようなお寿司を握れるかはわからない。
だが、物流と資源・費用対効果の問題をクリアしてしまえば、お値打ちで味も悪くない大衆向けのお寿司はより大量にできるかもしれない。
AIによる業務自動化を背景に、組織の合理化を進める動きがどんどん広がっている。
AI時代におけるリーダーシップとは、倫理や理念を掲げることではなく、人間の不完全さを理解した上で舵を取る力である。
アルトマンの物語は、テクノロジーの勝利ではなく、「人間の脆さと野心のせめぎ合い」そのものを描いた、21世紀の寓話なのだ。
ChatGPTのような生成AIからできるだけ良い成果を引き出すためのテクニックは「プロンプト・エンジニアリング」と呼ばれ、ビジネス・パーソンの新たなスキルとして注目を浴びた。
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
AIに代替できない知的生産が本当になくなるのは、10年先の話ではないと信じたいものである。
だが、スマホやパソコンのように、AIを使わないといけない世界に向かっていくことは間違いない。
通貨が鋳造された自由である間は…。

ワルター・アイザックソン著『イーロン・マスク』
AIの成功には現実世界の膨大なビックデータをボットに学ばせなければならないとマスクは理解しており、OpenAIがGoogleに後れを取っている点を指摘し、テスラの傘下に入るように説得しようとしていた。
その結果、アルトマンをトップに営利法人を立ち上げて資金調達に動く結果となった。
「テスラがOpenAIと人材を取り合うAI会社になったわけです。腹を立てたメンバーもいますが、私は、どういうことなのかちゃんと理解していました。」 ――サム・アルトマン
ワルター・アイザックソン著『イーロン・マスク』
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
飛行機のリクライニングシートを倒す権利を巡る口論と、国境をめぐる戦争には共通点がある。
それは、どちらも「所有の正当性」をめぐる対立である。
個人の小さな行動も、国家間の大きな衝突も、背後には「これは私のものだ」という感覚がある。
富を生むとされてきた所有が、現代社会においては多すぎる、かつ、強すぎることにより、市場の「渋滞」(グリッドロック)を招き、イノベーションを停滞させる懸念がある
マイケル・ヘラー著『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』
私たちは自分の身体でさえ、完全に自分のモノとは言えないのである。
この世全ての情報がAIに開示された時、本当に所有権はだれのモノだろうか?
カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』
AIは臨界を突破し、象牙の塔から出た。 ゆっくり進歩する時期は終わったのだ。深層学習を使ったアプリケーションとその関連AI技術は、すでに私たちの生活のあちこちに登場している。 本書が読者の目に触れる2021年後半以降には、AI世界秩序での予測は大層現実化している。 そろそろ、また新しいフロンティアに目を向けなくてはならない。
カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』
まとめ
✅ 成功の裏には「狡猾な政治力」と「理想主義の崩壊」がある。
✅ AGI開発は技術よりも「人間の感情」に左右される。
✅ サム・アルトマンは“光と影を使いこなす”現代のリーダーである。
1つのアイデアは(案)としては、世界全体からなるべく沢山の人達に参加してもらい、彼らの意見を集約して地球規模の合意を得ることです。皆で(AIが)これをやってはいけない、ここまでならやっても構わない、という許容範囲を決めるのです」
小林雅一著『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
⇒ 「理想」と「狡猾さ」を併せ持つ者が、未来をつくる。
我は死なり、我は世界の破壊者なり
オッペンハイマー
私たちが知らないといけないことは「人間」を知ることである。
「人間」である以上は…。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆

