• 投稿日:2024/10/11
  • 更新日:2025/10/09
【施術者向け】腰痛に潜む危険信号:レッドフラッグを見逃さないために

【施術者向け】腰痛に潜む危険信号:レッドフラッグを見逃さないために

きむ@名古屋の痛み改善整体サロン

きむ@名古屋の痛み改善整体サロン

この記事は約9分で読めます
要約
腰痛や慢性的な痛みに対して、筋骨格系だけでなく、重大な疾患の兆候(レッドフラッグ)を見逃さないことが重要です。徹底したカウンセリングと全身の評価を行い、必要に応じて速やかに医療機関に紹介することで、安心で安全な整体運営につながります。

こんにちは。


名古屋市守山区で整体院を経営している理学療法士のきむです。

施術を行う際、皆さんも「この痛みの原因は本当にこれで合っているのか?」と疑問に感じたことや、また、「このお客様の状態で施術していいのか?」という不安も、多くの施術者が抱える悩みだと思います。

しかし、痛みを訴えるお客様の背後に潜む深刻な疾患や症状を見逃すわけにはいきません。お客様の健康を守るために、常に慎重である必要があります

医療現場では「トリアージ(triage)」という考え方が使われます。これはフランス語で「選別」を意味し、災害や救急の場面で患者の緊急度や重症度に基づき、治療の優先順位を決定するプロセスです。限られたリソース(時間、人員、設備)を効率よく活用することを目的としており、腰痛においても、レッドフラッグの識別はトリアージの一環として重要です


そのために大切なのが「レッドフラッグ」に注意を払うことです。

レッドフラッグ」とは、重大な疾患や緊急対応が必要なサインのことです。

今回は「腰痛のレッドフラッグ」について、解説していこうと思います。


筆者について

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私は理学療法士として17年以上の経験を積んでおり、これまでに病院やクリニックで3万人以上の患者様を担当し、筋骨格系の障害や慢性痛、手術後のリハビリテーションに特化してきました。特に大学院の実習では「レッドフラッグ」を見逃さず、痛みの背後に潜む深刻な疾患を早期に発見するスクリーニング技術の習得に力を入れてきました。

理学療法士のCatherine Cavallaro GoodmanTeresa E. Kelly Snyderの名著『セラピストのための鑑別診断』に基づき、理学療法士にとって不可欠なスクリーニング技術を活用しています。


レッドフラッグとは何か?

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レッドフラッグ」とは、医学的に深刻な問題や緊急対応が必要なサインを示す専門用語です。

理学療法士が日常の臨床業務において、筋骨格系の問題だけでなく、内科的・神経学的疾患の兆候を見逃さずにスクリーニングする重要性が強調されています。

こうしたレッドフラッグを早期に発見することは、お客様の健康を守るために不可欠です。

腰痛におけるレッドフラッグ

腰痛患者の約85%は非特異的腰痛(原因が特定できない)ですが、残りの15%は特異的腰痛(原因が特定できる)に分類されます。

レッドフラッグは、この特異的腰痛の中でも特に注意が必要な症状を指します。その背後に重大な疾患が隠れていることもあります。こうした場合、単なる筋肉や骨格の問題ではなく、より深刻な疾患を示す「レッドフラッグ」の可能性があります。

腰痛に関連する具体的なレッドフラッグ

腰痛に潜むレッドフラッグのサインには、いくつかの特徴的なものがあります。

以下のような症状が見られる場合、速やかに医療機関での診察を受けることが推奨されます。


1. 夜間の痛みや安静時の痛み

通常、筋肉由来の腰痛は活動中や特定の姿勢で悪化し、安静にすることで軽減します。しかし、安静時や夜間に痛みが増す場合、腫瘍や感染症、内臓の問題が関与している可能性があります。特に、寝ている間に目が覚めるほどの痛みがある場合は要注意です。


2. 急激な体重減少

原因不明の体重減少は、がんや内分泌系の異常などの重大な病気を示すサインです。腰痛とともに短期間で体重が減少している場合は、背後に深刻な疾患が潜んでいる可能性が高いため、早急に医療機関での検査が必要です。


3. 手足のしびれや感覚の異常

手や足にしびれが広がる、または感覚が鈍くなるような症状がある場合は、脊椎や神経の圧迫が考えられます。椎間板ヘルニアや脊髄腫瘍など、神経に影響を与える疾患が原因となることもあるため、これらの症状は見逃さずにチェックしましょう。


4. 尿や便に関連する問題

腰痛とともに、突然の尿や便のコントロールが効かなくなる(失禁など)のは、馬尾症候群という緊急事態の兆候かもしれません。この症状が出た場合、迅速な対応が求められます。


5. 発熱を伴う腰痛

発熱を伴う腰痛は、感染症や炎症性疾患の兆候です。背骨や周辺組織に感染が発生している可能性もあり、放置すると症状が悪化するリスクがあります。発熱と腰痛が同時に発生した場合は、ただちに医師の診察を受けるべきです。


6. 外傷後の腰痛

交通事故や転倒などによる外傷の後に発生した腰痛は、骨折や内出血、組織の損傷が原因であることがあります。特に高齢者の場合、軽微な外傷でも重大な損傷を引き起こすことがあるため、注意深く評価する必要があります。

私の整体院での経験:迅速な判断が健康を守る

ある日、「昨日から急に歩けなくなった」というお客様が来店されました。歩行には介助が必要な状態で、バイタルサインは安定していたものの、急激な筋力低下が見られました。この状況は、神経の障害を示唆している可能性が高く、筋骨格系の問題ではないと判断しました。そのため、整体の施術を行わず、すぐにかかりつけの医療機関での受診をお勧めしました。

数日後、付き添いの方から「低カリウム血症」との診断を受け、数日間の入院を経て無事に回復されたと連絡をいただきました。早期に医療機関へつなげる判断が、患者様の健康を守ることに繋がったと実感しました。

この経験から、レッドフラッグの早期発見と、適切な対応の重要性を再確認しました。施術前の徹底した評価と慎重な判断が、安心・安全な整体運営の基本です。

レッドフラッグを見逃さないための整体院の役割

施術者は、お客様の痛みや不調が筋骨格系の問題だけではない場合、すぐに適切な医療機関に紹介する責任があります。こうした連携により、より早期に根本的な問題を発見し、適切な治療を受けることが可能となります。

安全で効果的な施術のために:私が徹底している3つのポイント

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徹底的なカウンセリング

初回のお客様はもちろん、毎回の施術前に、体調や生活習慣、精神的なストレスなど、あらゆる要素を丁寧に確認します。患者の背景を理解することが的確なスクリーニングに繋がるとされています。ボディーチャート(痛みの部位を正確に全て描写する)を完成させることで、描写が筋骨格系の特徴かどうかの判断材料になります。

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全身の評価

局所的な痛みだけにとらわれず、全身のバランスや筋力、神経系の状態を評価します。こうした広範な視点からの評価が重要であると強調しており、見落としのない判断が可能になります。

全身の評価項目

・姿勢検査

・自動運動検査

・他動運動検査

・他動的副運動検査

・抵抗運動検査

・触診検査

医療機関への迅速な紹介

レッドフラッグが疑われた場合、施術を中止し、速やかに医療機関への受診をお勧めします。

専門医への迅速な紹介が患者の健康を守るために非常に重要であり、適切なタイミングでの介入が求められています。

まとめ:レッドフラッグを見逃さず、健康を守る整体施術


いかがでした?

痛みや不調を抱えている方々は、その根本的な原因を明らかにし、適切な治療を受けたいと願っているはずです。腰痛をはじめとする症状の原因を深く探り、「レッドフラッグ」を見逃さないことが重要です。

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参考文献

1. 「Musculoskeletal Pain: Assessment, Prediction and Treatment (Mark Jones, Darren Rivett 著)

マーク・ジョーンズによる「クリニカルリーズニング」の理論やレッドフラッグに関する知識は、この書籍で詳細に解説されています。筋骨格系の痛みや症状を評価し、適切な診断を行うための包括的な方法が示されています。

2. 「Clinical Reasoning for Manual Therapists」(Mark Jones 著)

クリニカルリーズニングの理論と実践に関する詳細な解説が含まれており、徒手療法や理学療法における評価の重要性が強調されています。特に、レッドフラッグの早期発見についても触れています。

3. 「Orthopedic Physical Assessment (David J. Magee 著)

この教科書は、理学療法士やカイロプラクター向けに、身体の評価やレッドフラッグの兆候を見極めるための方法を網羅しています。臨床現場での評価技術を深く学べます。

4. 「Evaluation of Orthopedic and Athletic Injuries (Chad Starkey, Sara D. Brown 著)

スポーツ医学や整形外科的な怪我の評価に関する理論や方法を詳しく解説。レッドフラッグの判断に役立つ情報も豊富です。

5. 「Mechanisms of Clinical Signs (Mark Dennis, William Talbot Bowen, Lucy Cho 著)

病気や症状に対する臨床的な兆候を見分けるためのアプローチを学べる一冊。特にレッドフラッグのサインを臨床的に理解し、適切に対応する方法が詳しく述べられています。

6. 「Differential Diagnosis for Physical Therapists: Screening for Referral (Catherine C. Goodman, Teresa E. Snyder 著)

理学療法士向けの鑑別診断書で、特に「レッドフラッグ」を見逃さないための評価手法や、他の疾患との区別をする方法が書かれています。多くの理学療法士に推奨されている本です。

7. 「Therapeutic Exercise: Foundations and Techniques (Carolyn Kisner, Lynn Allen Colby 著)

理学療法における治療的運動に関する基礎と技術がまとめられています。レッドフラッグを考慮しながら、安全かつ効果的な運動療法を提供するための知識が得られます。

理学療法士17年間の経験と知識を活かし、痛みに関連した投稿をしています。

痛みで悩んでいる方は、是非、ご覧ください。

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この記事のレビュー(1
  • 会員ID:rouI5c3p
    会員ID:rouI5c3p
    2024/10/11

    ノウハウ寄贈ありがとうございます。 整体を営んでおりますが、病院勤務の経験もないので、こちらのノウハウの知識は大変参考になりました。 お客さんの腰痛をよくする以前に、何か重大な因子が隠れていないか見抜けるよう本ノウハウを活用させていただきます🙏

    きむ@名古屋の痛み改善整体サロン

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    2024/10/11

    ダディさん、レビューありがとうございます。参考になってとても嬉しいです。何か、分からないことがありましたら、ご連絡下さいね!

    きむ@名古屋の痛み改善整体サロン

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