• 投稿日:2024/11/24
  • 更新日:2025/10/01
「日本の『安心』はなぜ、消えたのか」:不祥事や他人を信用しない仕組みは私たちの魂に刻まれていた?

「日本の『安心』はなぜ、消えたのか」:不祥事や他人を信用しない仕組みは私たちの魂に刻まれていた?

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シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

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要約
日本人が「赤の他人を信じない」背景には、安心社会という独自の文化がある。身内中心の集団主義が経済成長を支えたが、不祥事や不正の原因にもなっている。本書では信頼社会への移行が求められる理由を、研究や実験データを通じて深掘りしている。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回は山岸俊男著「日本の『安心』はなぜ、消えたのか」2019年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。


著者:山岸俊男山岸俊男.jpg出典:Wikipedia

社会心理学者。1948年名古屋生まれ。一橋大学社会学部、北海道大学名誉教授。著書に「信頼の構造』など多数。
2018年没。


本書は山岸氏の過去の著作を一般向けにまとめたもので、知る人ぞ知る隠れた日本人論の名著である。


日本に古くからあった「安心社会」

これからの「信頼社会」という概念を知っておこう。

きっと、あなたの「守る力」となるはずだ。

我々には無意識の仕組みを持っている。


私の結論

「安心社会」から「信頼社会」に日本はシフトしていく。

でも不信を出発点にしてはいけない。

まずは、正直に積み重ねるのだ。


タルムード:正直な仕立て屋

正直な生き方にこそ、生産性ウィズダムがある。


安心社会と信頼社会とは何か?


1. 安心社会とは何か

■村社会が育んだ安心感す.png江戸時代の農村では、共同作業や助け合いを通じて「身内」を中心にした安心感が醸成された。


農村社会では悪いことや非協力的な行動は損をする。

田植えを手伝わないと、困ったときに誰も助けてくれない。

最悪、村八分や追放となる。

つまり、協力し合うのがお互いに得である。🧐


⇒ 身内社会のルールが生んだ閉鎖的な安心感が「安心社会」


「和を以て貴しとなす」
人々が仲良くしていくことが大切であることを意味する言葉。


■外の世界との対立

村外の人々や新しい環境には不信感を抱く傾向が強かった。

「同じ村の衆だから悪さはしないだろう」と安心できる。

しかし、ヨソ者は警戒して、場合によっては村に入れずに追い返してしまう。せ.png⇒ ヨソ者排除が社会の特徴に。


この仕組みが、日本人は他人を信用せず、きわめて個人主義的に振る舞う方向へ向かわせる。


いつ「安心社会」の人間が悪い方向に向くのか?😱

それは「集団」というタガが外れた場合に起こるとしている。


では、「集団」というタガが外れた場合はどのような瞬間か?🤔


⇒ それは農村社会の人が、都会に出た時に起こる。

ち.png都会には村の制裁システムがない。

周囲は赤の他人。


集団主義社会の農村は、個人同士で信頼がなくても動く「安心社会」

一方で都会は、個人同士の信頼が必要になる「信頼社会」である。


日本人が他人と協調するのは、身内だけの「安心社会」にいるときだけ。

赤の他人は信用しないし、協調できない。


だったら😅都会に出なければ大丈夫かというと…そんなことはない。😭


現代では、SNSやオンラインコミュニティの存在がある。


15.pngつまり、「家庭」「職場」といった「安心社会」から…。


「SNS」や「オンラインコミュニティ」といった「信頼社会」に私たちは自然と出てしまう時代になっている。


私たちの中には、"タガが外れる瞬間"を持っていることを知っておこう。
自己を顧みたり、自分や家族を「守る力」のヒントになる。


SNS疲れなんて言葉が生まれるのも、無理はない。
私たちは「信頼社会」を常に警戒しているからだ。


では、「信頼社会」とは何なのか?🤔


2. 信頼社会との違い


「安心」と「信頼」は似て非なるものだとしている。🧐

「安心」:自分に不利益をもたらさないであろうという自分自身の評価。

「信頼」:自分に利益をもたらしてくれるであろうという相手の能力や人格についての評価


参考になる実験がある。

著者(山岸俊男)が行った 報酬選択実験さ.png見知らぬ3人が個室に入って、各自で個人作業を20回繰り返す。

毎回の作業で報酬があり、平均してどちらを選ぶかの実験である。

これを日本とアメリカで行った

集団主義的な人なら集団報酬を選ぶ。
個人主義的な人なら個人報酬を選ぶはずとしている。


結果❶ 個人報酬と集団報酬に差がない場合。

個人報酬を選んだのは日本も米国も平均して20回中8回。
日米に違いはなかった。


結果❷ 個人報酬を集団報酬の半分にした場合。

米国で個人報酬を選んだのは20回中1回。

日本で個人報酬を選んだのは20回中8回。
報酬を半分にする前と同じだった。🧐


著者はこの結果をこう推察した。🤔


実験が示す日本人の心理

仮に報酬が減っても、「他人に足を引っ張られたくない」


⇒ 日本人の信頼度は低水準である。

「信頼」よりも、自分に不利益をもたらさないであろうという「安心」を重視した。


統計数理研究所の調査によると「人は信用できる」と答えたのは、日本人はおよそ30%とのこと。(統計数理研究所調査:参考サイト 多少情報が古いので注意。)


逆に米国では「個人報酬は損するから集団報酬がいい」と考えたことになる。

なぜか?🤔

米国の信頼社会形成の歴史は移民社会で構築された。

公平なルールと評判の仕組みが信頼社会を支えている。


⇒ ルールの明確化が「信頼」を促進する。


アメリカでは自分に利益をもたらしてくれるであろう「信頼」を重視した。

ジョブ型雇用は、まさに信頼社会の一員として契約することである。


書籍でしか確認できなかったが、「人は信用できる」と答えたのは、米国人は47%とされている。
(統計数理研究所調査より。米国人1600人への調査)


もちろん。これを読んだ人自身が、「本当にそうか?」🤔と思うのも正しい。

「タルムード」と同じように、読んだ、聞いた内容に対して自分がどう思い、考え、納得したのかが重要である。

そこに善悪などない。


さて、「安心社会」は何がいけないのか?🤔


3. 「安心社会」から生まれる不祥事隠しや偽装問題

安心社会の残響と不祥事

安心社会が持つ「身内主義」は、不正や隠蔽を生む要因となっている。

安心社会では赤の他人を信じない。


都合の悪い情報は身内だけに留めて隠しがち。


⇒ 不正の根源は「信頼」の欠如。


都合の悪い情報を共有せずに、自力解決を図ってしまう。

結果、真面目で責任感が強く、自力で問題解決しようとする日本人ほどウソつきに見えてしまう。


では、どうすればよいのか?🤔


4.信頼社会への転換を意識する

信頼社会では、まず赤の他人を信じ、協力関係を築く姿勢が求められる。

不信の念を排除し、まず他人を信頼すること。そうしない限り、信頼社会では自分も信頼されない。


⇒ 他者信頼の仕組みが鍵。


15.png不祥事を起こさないためにはどうすればよいか?

「管理・監視の強化」は「安心社会」の視点である。

「正直に行動し続ける人がトクする仕組み」が「信頼社会」の視点である。


ネットも「信頼社会」といえる。

ネットオークションでは騙されるリスクがある。

当初ユーザーはネガティブ情報を気にしていたが、ネットでは別名で新規加入すればネガティブ情報はリセット可能。😅

すると、次第にユーザーはいい評判を地道に蓄積する人を評価するように変わっていった。

信頼社会をつくるには、このように「正直」の評判を保証する仕掛けも必要である。

”いいね”や"フォロワー"はこの発想から来ていると考えると中々に面白い。🤔


リベ大参考動画

【大富豪に教わった】GIVEしても成功する人としない人の違い【人生論】:(アニメ動画)第223回


余談

今でこそ米国は信頼社会だが、かつては日本と同じ他人を信用しない安心社会だったという。🤔

移民の国・米国は、19世紀まで同じ出身地や宗教の人たちが集まる集団社会だった。

19世紀後半、急激な工業化でこの集団社会が失われ、公平で効率的な社会制度が整備されて米国が誇る「フェアな信頼社会」がつくられた。


このフェアな信頼社会を維持する仕組みが、「法制度」=「ルール」だった。


この原点はなんと古代ローマの歴史から。

古代ローマは人々が安心して商取引するルールを法律で定めた。

ローマ帝国内に住む外国人も保護の対象。

商取引の問題を訴訟にもち込めるローマでは、安心して取引ができた。


米国がいかに信頼社会に変わったかを学べば、日本にとって参考になる。

文化、歴史から学べるものは強い。

仮に経験だったとしても、活かせるなら強い。


まとめ


⇒ 「安心社会」から「信頼社会」へのシフトが日本の未来を開く。

これからはさらに安心社会から信頼社会への心の切り替えを意識しなければならない。

不信を出発点にしてはいけない。

まずは、正直に積み重ねるのだ。


組織や社会構造論に関しては、いくつか既に要約している。

組織に起こる不都合

「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」
マシュー・サイド 著 1997年発行

「組織の罠」
クリス・アージリス 著 2016年発行

『恐れのない組織』
エイミー·C·エドモンドソン著 2016年発行

海外から見た日本組織の強み

「OODAループの戦略」
チェット・リチャーズ著 2019年発行

「日本人」に焦点を当てた作品

『タテ社会の人間関係』
中根千枝 著 1967年発行

是非、参考になってくれると嬉しい。


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆


求めていなければ、授からない。

だから、いつまでも求めていなければならない。

自分にだけ授かるものが、どこかにある。

それを授かるのはいつなのか。

ついに授からないかもしれないが、求めていなければ授からないのだ。

- 華道家・勅使河原蒼風 -

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