- 投稿日:2024/11/22
- 更新日:2025/10/01

初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回は、中根千枝著『タテ社会の人間関係』(1967年発行)をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:中根千枝出典:Wikipedia
日本の社会人類学者。日本における社会人類学の草分け。専門はインド・チベット・日本の社会組織。日本の社会構造を分析した『タテ社会の人間関係』は何度も再版されている名著。100万部超の超ロングセラー。
東京大学東洋文化研究所教授、同所長などを経て、東京大学名誉教授。日本学士院会員,2001年文化熱章受章。著書に「未開の顔·文明の顔』『適応の条件』「社会人類学』などがある。
2021年に94歳で亡くなられている。
参考:https://www.sankei.com/article/20211105-JFTOEB2OCFOHFIDTJ72SP6UDII/
日本の社会がどのように位置づけられるかという、社会構造の分析に関する新しい理論を提出しようとするものである。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
1967年発行だからといって甘く見てはいけない。
古い作品が残っている、受け継がれる理由は必ず存在する。
・「現代の経営」
P·F·ドラッカー 著 1954年発行
・「経営者の条件」
P·F·ドラッカー著 1966年発行
・『競争優位の戦略』
①バリューチェーンとは?
②競争を優位にする3つの戦略
M·E·ポーター著 1985年発行
・「ザ・ゴール」
エリヤフ・ゴールドラット 著 1984年発行
ここに示したものは、組織や経営に関するバイブルとして現代まで利用されている書籍だが、一般向けではない…。
硬い印象を受けてしまうものもある。
が、本作はもう少しマイルドで、現代の職場や人間関係の理解にも役立つ内容となっている。
決して日本の組織文化はダメ!と言っているような本ではなく、ただ、他の国とフラットに比較している。
本書は、日本社会の構造を的確にとらえるための「モノサシ」として存在している。
ゆえに、ロングセラーとなった。
その性格は著者にも表れている。
中根千枝は東大で女性として初めて教授になった人物である。
完全な男社会である当時のキャンパス環境で活躍するため、日本特有の「タテ社会」での処世術を極めた人物と言い換えることもできる。
社会構造を冷静に把握し、他者との調和をとって教授の地位に就いた。
まさに当時、時代の最先端をゆく人物である。🧐
日本社会の構造を最も適切にはかりうるモノサシ(和服における鯨尺)を提出することにある。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
「鯨尺」・・・着物など和装に用いる布類を測る際に用いられる単位
鯨尺の一尺は37.88cmである。
なぜ日本の転職にはリスクが付きまとうのか?
日本のいかなる社会集団にあっても、「新入り」がそのヒエラルキーの最下層に位置づけられているのは、この接触の期間(社会資本)が最も短いためである。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
結論:日本社会は「タテ社会」の文化である。
転職すると「社会資本」がリセットされるため、職場での影響力を再構築しないといけないから。
日本組織の歴史を知ったうえで、「転職」の選択肢を考えよう。
では、そもそも「タテ社会」とは何か?🤔
❶タテ社会とヨコ社会とは?
場の共通性によって構成された集団は、枠によって閉ざされた世界を形成し、成員のエモーショナルな全面的参加により、一体感が醸成されて、集団として強い機能をもつようになる
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
個人からなる社会集団を構成する要因は、「資格」と「場」の2つからなる。
「資格」:氏や素性、学歴、地位、職業、経済的立場、男女といった属性。
「場」:地域や所属機関のような一定の枠。○○村の成員、○○大学の者
■タテ社会の特質:縦のつながり重視日本社会は「タテ社会」に属し、集団内での上下関係や所属意識が重要視される。
日本人の集団意識が「場」におかれている。
年功序列。学生時代は先輩・後輩の上下関係、国会議員は当選回数等。
「営業のマサルです」ではなく「○○社のマサルです」と言う。
○○社というタテ社会のメンバーであることが重視されている。
⇒ 組織や家庭内の役割分担が鮮明化される。
■ヨコ社会との違い:個の重視インドのカースト制や欧米の階級制は「ヨコ社会」の典型例。
属性が固定され、横のつながりを重視。
補足
インドカースト制度:数千年の歴史を有する社会的な身分制度で、結婚や食事、職業などにおいて生まれから規制されている。
インド人の集団意識はカーストに象徴されるように、「資格」によって規定されている。
年齢にかかわらず、能力があれば若くても抜擢されやすい。
⇒ 対照的に個人の自主性が重んじられる。
❷なぜ日本はタテ社会なのか?
場によって個人が所属するとなると、現実的に個人は1つの集団にしか所属できないことになる。その場を離れれば、同時に、その集団外に出てしまうわけであり、個人は同時に2つ以上の場に自己をおくことは不可能である。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
■「イエ(家)」意識の名残
歴史的に、日本の家族構造が現代の組織文化に影響している。
「イエ(家)」は家族成員と家族以外の成員を含んだ生活共同体・経営体である。
この「イエ(家)」集団内における人間関係は、他の人間関係よりも優先される。
例
他の家に嫁いだ娘・姉妹よりも、他の家から入ってきた嫁のほうが「家の者」として重視される。
同じ両親から生まれた兄弟姉妹という「資格」に基づいた関係が永続するインド社会とは違う。
⇒ 社員を「家族」として捉える考え方が、年功序列や忠誠心を生む。
■「ウチ」と「ソト」の文化
「ウチ」は親密で協力的、「ソト」には冷淡という日本人特有の意識が影響。
仲間内に「ウチら」、外部の人には「オタク」と言うのもそこから来ている。🤔
⇒ 外部との壁が組織文化にも影響する。
❸ タテ社会が抱える課題
「ウチ」「ヨソ」の意識が強く、この感覚が尖鋭化してくると、まるで「ウチ」の者以外は人間ではなくなってしまうと思われるほどの極端な人間関係のコントラストが、同じ社会にみられるようになる。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
■能力主義が根づかない背景
タテ社会では、能力よりも「所属期間」が重要視される。
A社の社員になった人は、A社内で他の社員と接触した時間の長さが、その人が社内で使える社会資本になる。
⇒ 社内での序列維持が優先され、個人の能力が発揮されにくい。
日本で能力主義が根づかないのも、タテ社会の産物である。
日本社会では「能力はみんな同じ。誰でもやればできる。だから努力しよう。」
能力平等観が根強く、同期の間では差をつけられない。
そこで、入社年や学歴で序列をつける。
結果、組織にいる全メンバーに、序列がつく。
長生きな会社ほど、その関係性は強くなる。
参考になる本
・『ジャック・ウェルチ わが経営 上下』
ジャック・ウェルチ 著 2005年発行
本題:転職がなぜリスクとなるのか?
転職すると「社会資本」がリセットされるため、職場での影響力を再構築する必要がある。
⇒ 転職が合理的に見えない背景となる。
余談
半世紀前の本書にも「転職は入社2〜3年の若年層に集中」と書いてあり、いつの時代からも転職の傾向は変わっていない。
彼らは社内の社会資本の蓄積が少なく、転職の損失が小さい。
新入社員の大量退職も、タテ社会で合理的に判断した結果から生まれていると考えると興味深い。🤔
ヨコ社会の新メンバーはルールにもとづき加入が認められる。
新メンバーは新参者扱いされず、他メンバーと同列扱い。
また、ヨコ社会は契約にもとづいて動く。
とはいえ、デメリットばかりでないこともある。
極論、タテ社会では上に立つ者は「お飾り」でよい。
仕事ができないトップでも組織は動くことができるからである。
❹現代におけるタテ社会の活用法
この組織構造の長所は、リーダーからの、末端成員までの伝達が非常に迅速に行われるということ、そして、動員力に富んでいることである。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
■小集団の強みを活かす
日本人は小集団での議論や意思決定に長けている。
特に仲間5〜7名の小集団の結束が強い。
遠慮なく自分の意見をズケズケと言って、感情を出して徹底的に議論し、意思決定する。
日本では、トップといえども「経営幹部」という小集団のメンバーと考えれば良い。下の者が実力者ならば、トップに助言する形で組織を動かせる。
⇒ 集団を活かした効率的な動きが可能。
「あうんの呼吸」で動くタテ社会は実に効率的といえる。🤔
参考になる本
・「OODAループの戦略」
チェット・リチャーズ著 2019年発行
・『1兆ドルコーチ』
エリック・シュミットほか 2019年発行
・「NO RULES 世界一『自由』な会社、NETFLIX」
リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー共著 2020年発行
余談
2014年には、当時87歳の中根氏のインタビュー記事が新聞に掲載されている。
「明治維新や終戦直後のような混乱期には若くて立派なリーダーが出てきた。能力があると周囲が認め、実際に行動力がある人がリーダーになれば、その集団はとてもうまくいく。タテの関係を認めつつもう少し柔軟なシステムになるのが望ましいのでしょうね」
2014年11月24日付『産経新聞』の記事「中根千枝さん『タテ社会の人間関係』」より抜粋
2014年よりも、「柔軟なシステム」には向かってきている!
まとめ
本書は「日本人の特質」ではなく、あくまで「単一社会の理論」と呼ぶべきものである、というのが著者の立場である。
中根千枝著『タテ社会の人間関係』
⇒ 日本組織の歴史を知ったうえで、「転職」の選択肢を考えよう。
参考になる本・「今いる場所で突き抜けろ!」
カル・ニューポート 著 2017年発行
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆
「読書せよ。だが学者になってはいけない。勉強は知識を得るためのものであり、人は行動することが第一である。」-吉田松陰-