- 投稿日:2025/11/19
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回はバートランド・ラッセル著『幸福論』1930年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
筆者:バートランド・ラッセル
出典:Wikipedia
1872-1970。現代イギリスを代表する思想家であり、20世紀最高の知性の1人。厳密な数理哲学者、理性の情熱的な提唱者、独断的・情緒的な思想の批判者、活動的な平和主義者として活躍した。著書に『ライプニッツの哲学』『数学原理』『結婚と道徳』『教育論』などがある。
ここでは2021年発行のNHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 『幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために』を参考にしている。
著者:小川仁志
1970年、京都府生まれ。哲学者。山口大学国際総合科学部教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。徳山工業高等専門学校准教授、プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。また、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努めている。専門は公共哲学。
✅ 幸福は待つものではなく、能動的に設計すべきである。
✅ 不幸の核心は「自己没頭」と「社会との断絶」である。
✅ 幸福の三本柱は、仕事・愛情・家庭である。
「なぜ現代人は、便利になったのに幸福感を得られないのか?」
「SNSで他人と比べて疲弊するのはなぜ?」
ラッセルは約90年前に、現代にも通じる幸福の法則を提示した。
今回はラッセルの『幸福論』から、不幸を遠ざけ、幸福を能動的に設計するヒントを紹介。
大本は1930年に彼が58歳の時に出版された哲学的エッセイである。
原著のタイトルは『The Conquest of Happiness』であり、直訳すると「幸福の征服」となる。
日本語としては「獲得」と訳されるのが近いかもしれない。
幸福は、きわめてまれな場合を除いて、幸運な事情が働いただけで、熟した果実のようにぽとりと口の中に落ちてくるようなものではない。
だからこそ、私は本書を「幸福の獲得」と呼んだのだ。
バートランド・ラッセル著『幸福論』
ある単語に対してどのように訳すべきなのかは文化や訳者によって異なる。
著者であっても、完全100%の思想を伝えられない面白さがある。
「肩こり」という単語のない文化圏では、意味合いの近いものを採用するしかないのだ。
話を戻すと、幸福を受動的に待つのではなく、能動的に獲得すべきものであるとする力強い思想が特徴である。
ちなみに、幸福論の有名古典が3つ存在する。
スイスの哲学者・ヒルティの『幸福論』(1891年)
フランスの哲学者・アランの『幸福論』(1925年)
イギリスの哲学者・ラッセルの『幸福論』(1930年)
私たちは時間や空間や偏見に関係なく”幸福”になりたいと願っている。
この記事や他の本を読んで幸福になれるかはわからないが、”興味”は生きる糧となる。
バートランド・ラッセル著『幸福論』
幸福とはバランスであり、仕組みである。
幸福な人とは、客観的な生き方をし、自由な愛情と広い興味を持っている人である。
また、こういう興味と愛情を通して、そして今度は、それゆえに自分がほかの多くの人びとの興味と愛情の対象にされるという事実を通して、幸福をしかとつかみとる人である。
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
不幸の正体を知る:自己没頭が招く罠
不幸な人たちは、不眠症の人たちと同様に、いつもそのことを自慢にしている。
もしかすると、彼らの自慢は、尻尾を失ったキツネの自慢に似ているかもしれない。
もしそうなら、それを治すには、新しい尻尾の生やし方を彼らに示してやることだ。
(第一章 何が人びとを不幸にするのか)
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
キツネは『イソップ童話』の「しっぽを切られたキツネ」から来ている。
自慢のしっぽを持つキツネが、ある日ワナにかかってしまい、尻尾を失う。
そこで、「みんながしっぽを切れば自分だけが目立たなくてすむ」と考え、仲間のキツネたちに「長いしっぽなんて重くて邪魔なだけだ、切ったら楽になるよ」とすすめる。
しかし、仲間のキツネの一匹が「お前がしっぽをなくしたから、そんなことを言っているだけだ」と見抜き、他のキツネたちも納得しなかったというお話。
⇒ 自分の殻に閉じこもると幸福は遠のく。
ラッセルは不幸の原因を「統合の欠如」とし、自己と社会の断絶を指摘した。
称賛を求めるナルシシズムや、権力を追い求める誇大妄想は典型例である。
つまり、人は自分のことばかり考えると不幸になる。
(また、自分以外のことばかりも同じ。)
ラッセルはこの現象を「統合の欠如」と呼び、自己と社会との断絶を不幸の根本原因とした。
極端な自己没頭は、他者や社会とのつながりを断ち切り、孤立を深める。
その結果、世界を敵視し、心はますます閉ざされるのである。
ラッセルは、ナルシシズム、罪悪感、誇大妄想を典型例として挙げた。
ナルシシズムは「自分が注目されるべきだ」という執着であり、現代ではSNSでの「いいね」依存に相当する。
罪悪感は過去に囚われることで未来の可能性を潰し、誇大妄想は権力や名声に取り憑かれた不安定な心を生む。
この三つは互いに絡み合い、心を不安と不満で満たすのである。
競争の哲学によって毒されているのは、仕事だけではない。
余暇も、同じように毒されている。
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
承認欲求の罠:SNS時代への警鐘
人は他者なしに生きられないが、高次元の欲求に抗う術も必要だ。
読者は、ある芸術家のことを別の芸術家の前でほめるという軽率なことをしたことがあるだろうか。
(中略)
もしあるなら、太鼓判を押してもいい、爆発的なしっとを誘発したはずである。
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
⇒ 評価に囚われると幸福は消える。
ラッセルは「虚栄心は自信のなさから生まれる」と語る。
他者の評価に依存する心は、現代のSNS社会でより顕著になっている。
現代人の不幸の多くは、承認欲求に起因する。他者の評価を過度に気にし、自分の価値を他人の目に委ねることは、永遠に満たされない渇きを生む。
ラッセルはこれを「虚栄心」と呼び、「虚栄心は自信のなさから生まれる」と断言する。
SNSはこの傾向を加速させている。
「フォロワー数」「いいねの数」は、かつての名声や財産に代わる新しい指標となった。
しかし、それは不安定な基盤である。
他者の承認に依存する幸福は、ひとたび評価が下がれば崩壊する。
ラッセルの言葉を借りれば、「幸福は他人の好意に頼る限り不安定である」ということだ。
幸福を奪還する方法:外界への関心
複数の分野に興味を持つことは君自身の居場所を増やすためにある。
幸福の秘訣はこういうことだ。
あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。
そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ。
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
⇒ 興味を広げ、他者に友好的であれ。
幸福の秘訣は、外に関心を向けること。
多くの対象に興味を持てば、人生の選択肢が増え、喪失への耐性も高まる。
幸福を得るための第一歩は、自己から外界へ関心を移すことである。
ラッセルは、「外界に多様な興味を持てる人間は、失敗や喪失にも強い」と述べている。
興味を一つに限定すれば、それを失ったときに世界が崩壊する。
しかし、複数の対象に情熱を注ぐことで、人生はしなやかさを持つ。
例えば、仕事以外にも趣味を持ち、人間関係に幅を持たせることだ。
ある日、キャリアに行き詰まっても、登山や音楽、読書といった関心があれば、精神の均衡を保てる。
これは現代にも通じる重要な教訓である。

齋藤考 著「本当の『頭のよさ』ってなんだろう?」
夢中になれる力は、さまざまな場面で生かされる。自分の新たな可能性を知るためには、「好きなこと」をどんどん増やしていくのがよい。好きなことを増やすには、「食わず嫌いにならないこと」が大切だ。つまり、好奇心を持つこと。知らない世界に踏み込めば、新たな興味が開けるかもしれない。
齋藤 考 著『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?―勉強と人生に役立つ、一生使えるものの考え方』
幸福の三本柱:仕事・愛情・家庭
大事なのは突出することではない。偏らないことだ。
なんぴとも完全であることを期待すべきではないし、また、完全でないからといって不当に悩むべきではない。
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
⇒ 内発的動機で働き、愛情を与え、家庭を大切にする。
⇒ 努力と手放す勇気のバランスが幸福を呼ぶ。
仕事は素材への関心に基づき、愛情は相互性を重視すること。
家庭は安定と安心の基盤であり、幸福を支える重要な要素である。
だが、同時にコントロールできない事柄への執着は不幸の原因となる。
他人の性格を変えようとする努力は徒労に終わる。
しかし、自分の態度を変える努力は可能である。
ラッセルは幸福の源泉として「仕事・愛情・家庭」を挙げた。
この三つは、現代でも不変の要素である。
仕事は、単なる金銭獲得の手段ではなく、自己実現の場であるべきだ。
ラッセルは「素材への関心と創造的喜び」を強調する。
つまり、他者の承認や報酬だけを目的とするのではなく、その行為自体に価値を見出すことが重要だ。
愛情は、与えることと受け取ることの相互性に基づく。
片方が搾取的であれば関係は破綻する。
ラッセルは「愛情は人を自己の牢獄から解放する」と述べており、孤立を防ぐ力がある。
家庭は安定と安心の基盤である。
現代では多様な家族形態があるが、その本質は変わらない。
何も、愛情や家庭は従来の価値観だけの範囲ではない。
血のつながりや一度も実際に会ったことのない人同士でも、コミュニティでも、人とのつながりは生まれる。
信頼と安全を感じられる場を持つことが、人間の幸福にとって不可欠である。

エドワード・L・デシ 著『人を伸ばす力』
心理学者ハリー・ハーロウは、サルの檻にパズルを入れてみた。
すると何も報酬を与えないのに熱心に楽しそうにパズル解きに取り組んだという。
報酬や脅しからくる動機づけではないやる気の出し方。
ハーロウはこの現象に「内発的動機付け」と名付けた。
この本には希望がある。 なぜなら、自分たちのために、子どもたちのために、雇われている人たちのために、患者のために、学生のために、スポーツをする人のために、私たちは何ができるのか -- 私は社会のために何ができるのか -- を提示しているからである。
エドワード・L・デシ 著『人を伸ばす力』
岸見一郎・古賀史健 著『嫌われる勇気』
⇒ 行動は「目的」によって選ばれる。
客観的な世界に住んでいるのではなく、自らが意味づけをほどこした主観的な世界に住んでいます。あなたが見ている世界は、わたしが見ている世界とは違うし、およそ誰とも共有しえない世界でしょう。
岸見一郎・古賀史健 著『嫌われる勇気』
まとめ
✅ 幸福は待つものではなく、能動的に設計すべきである。
✅ 不幸の核心は「自己没頭」と「社会との断絶」である。
✅ 幸福の三本柱は、仕事・愛情・家庭である。
幸福な人生は、不思議なまでに、よい人生と同じである。
NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために
幸福は自然に舞い込むものではない。
能動的に設計し、外界への関心を広げ、愛情を深め、仕事に情熱を注ぐことで、幸福は現実のものとなる。
ラッセルの言葉を借りれば、「幸福は獲得すべき対象」なのだ。
⇒ 幸福は待つのではなく、獲得するもの。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆

