- 投稿日:2026/01/24
初めまして!シロマサルです。
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今回はエリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』(2020年発行)をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:エリック・A・ポズナー
シカゴ大学ロースクールのカークランド・アンド・エリス特別功労教授。シカゴ在住
著者:E・グレン・ワイル
マイクロソフト首席研究員で、イェール大学における経済学と法学の客員上級研究員。ボストン在住
✅ 資本主義の停滞は「所有の独占」に原因がある。
✅ 財産・投票・データを共有化することで新しい競争原理を取り戻せる。
✅ 「支配なき公正社会」は、ラディカルな制度改革から始まる。
なぜこの楽園は失われてしまったのだろう。
どうすれば潜在能力を発揮できるようになるのだろう。
この問題をめぐる論争はありきたりなものだ。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
いま、資本主義は限界を迎えている。
成長は止まり、格差だけが拡大する。
大抵この手の話で論じられる対抗策は2つに分かれている。
❶政府は金持ちに課税して貧しい人に供給せよ。
❷財産権を徹底し、税率を引き下げ、規制を減らして経済を回して、最低賃金・所得補助の拡充をする。
ポズナーとワイルは、この停滞と不平等の同時進行を「スタグネクオリティ(経済成長が停滞し、同時に格差が拡大する現象)」と呼び、根本原因を「私有財産制そのもの」に見出した。
富を生み出した仕組みが、いまや富を固定化する仕組みへと変質している。
そこで彼らが提案するのが、所有のルールを根本から再構築する「ラディカル・マーケット」だ。
一言でまとめると、「私有財産制度を根本から見直し、市場のルールを大胆に改革することで、競争原理と共同体性が両立する公正な社会を目指す」というものである。
(大切なものをひとり占めしないで、みんなで使えるようにする新しいルールを考えよう、という本)
今回は、その核心を3つにまとめて紹介する。
『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
大きな水たまりでは、いずれ水は腐るだろう。
ラディカル・マーケットとは、市場を通した資源の配分(競争による規律が働き、すべての人に開かれた自由交換)という基本原理が十分に働くようになる制度的な取り決めである。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
資本主義の病、“スタグネクオリティ”──所有の固定化が生む停滞と不平等
椅子に座るものを入れ替えやすくする。その方が健康だ。
私たちの社会は競争市場によって成り立っているとされているものの、きわめて重要な市場は独占されているか、そもそも存在していない。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
⇒ 独占が市場を腐らせる。
現代の資本主義は、成長が止まり、格差だけが広がる「スタグネクオリティ(stagnequality)」という病に侵されている。
これは stagnation(停滞)と inequality(不平等)が融合した造語であり、エリック・ポズナーとグレン・ワイルが指摘する現代経済の本質的な危機だ。
かつて市場は、資源を最も効率的に使う者の手に流れる合理的な仕組みだった。
しかし今では、一度富や権利を得た者がそれを固定化し、他者の参加を阻む構造が完成している。
19世紀には、富を創造する能力が著しく高まった。蒸気と電気が導入され、機械化、特化が進み、新しいビジネスの手法が生まれて、労働の力は大きく高まった……。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
企業は巨大化し、投資ファンドは市場全体を支配し、デジタルプラットフォームはデータを独占する。
本来の市場の役割であった「流動性」が失われ、経済の新陳代謝は止まっているのだ。
著者たちは、この構造を維持している根源を「私有財産制」に見出す。
私有とは、所有者が他者を排除できる権利である。だがそれは同時に、社会全体の停滞を招く装置でもある。
土地や企業、そして情報といった資源が一部の手に集中すれば、機会は失われ、創造性も枯渇する。
ポズナーとワイルは問う。
「所有は、永続的である必要があるのか?」
この問いこそ、現代社会が抱える構造的停滞を打破するための出発点である。
彼らの答えは、資本主義を捨てることではなく、それをラディカル(根源的)に再設計することにあった。
すべてをオークションに──“共同所有自己申告税(COST)”が変える所有の意味
ユーモアのある歩み寄りを。自由なる取引とかけひきを。
オークションはまさしくラディカル・マーケットだ。
オークションでは参加者は互いに入札し合うルールになっているので、競売にかかるものは、それを一番必要としている人の手に渡ることになる。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
⇒ 財産を“使える人”に循環させる。
彼らの代表的な提案が、共同所有自己申告税(COST:Common Ownership Self-Assessed Tax)である。
「COST」は「何かを手に入れるために必要なお金や努力」のこと。
アイスを買うには100円が“COST”だよということ。
これはすべての財産を「常時オークション」にかけるという、かつてない制度設計だ。
仕組みは明快である。
資産を持つ人は、自分でその価値を申告し、その評価額に応じた税を支払う。
ただし、他人がその額で買いたいと申し出た場合、所有者は拒否できず必ず売却しなければならない。
つまり、資産を保有するとは「この価格なら手放してもよい」と社会に宣言している状態だ。
安く申告すれば誰かに奪われ、高く設定すれば重い税が課される。
その結果、土地も企業も知的財産も、社会全体で最も有効に使える人の手に移動していく。
この制度の本質は、「所有権の社会的共有化」である。
個人が完全に支配するのではなく、社会全体が“いつでも買い取れる”という構造を通じて、資源を「遊ばせておく」インセンティブをなくすのだ。
たとえば、不動産を例にとればわかりやすい。
持ち主が土地を放置すれば、誰かがその価格で買い取って有効活用する。
結果として、都市の空き地は減り、経済活動が活性化する。
この“循環の強制”こそ、停滞した資本主義への最も過激で論理的な解答である。
もちろん、感情的価値や生活基盤といった領域には慎重な設計が必要だ。
だがCOSTの思想は、私有財産を“社会と共有する権利”へと進化させるものであり、「独占を防ぎながら市場原理を最大限に活かす」という、21世紀的な自由市場の再定義なのだ。
当然、簡単にできるものではない。
確定申告やいくつもの要件を実施するのが嫌な人もいる。
また、いくつかのポイントも存在する。
❶保有者は資産をまとめたり、バラバラしたりすることが選べる。
❷資産の種類によっては買い手への明け渡しに猶予期間を設けて、受け取りと配送にかかるコストは買い手が負担する。
❸住宅のような購入前に検査が必要な資産は、記載価格の数%を保有者に支払い、検査後に購入手続きを選択できる。
❹流行りや品薄の商品の売却益の税率を高くし、頻繁に回らない資産(消耗品)の税率はとても低くする。
❺二重課税を避ける。
❻保有者はその資産を手入れしなければならない。
❼新たなテクノロジーや制度の組み込みが必要。
実現や実際に効果があるかを検証するためのハードルは多いのが現状である。
税金の複雑な処理はAIやデータセンターの処理能力が向上すればクリアしていけるとは私自身思う。
とはいえ、10年単位の緩やかな変化が望ましい。
政治とデータを解放せよ──“共有”が生み出す新しい自由のかたち
流れる大河であれば、水が腐ることはない。
財が私的なものではなく、公共のものである点が違う。国民投票は、賛成票が反対票を上回る場合に承認される。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
⇒ 権力も情報も、独占させない。
ラディカル・マーケットの思想は、経済だけにとどまらない。
それは民主主義とデジタル社会にも「所有の再設計」を迫る哲学である。
著者らは、政治の領域においては「二次の投票(Quadratic Voting)」を提唱する。
「QV」は「大切だと思えば思うほど、たくさんポイントを使うルール」のこと。
この制度では、1人1票ではなく、有権者が例えば100点持っていて、「選好の強さ」に応じて票を配分できる。
ただし、投票数が増えるほどコスト(クレジット消費)が二乗で増大する。
二乗(にじょう)とは、ある数や式を2回掛け合わせること。
1票なら1点。2票なら4点。3票入れたいなら9点、5票なら25点となる。
そして10票なら100点となる。
「みんなで遊ぶおもちゃを決めるとき、どうしても遊びたいなら“ポイント”をたくさん使うけど、いっぱい使うほど1個あたりの価値はだんだん減る、というルール」である。
私たちは支持する政党や派閥が1つとは限らない。
少数派でも強い意志を持つ人々が意思を反映でき、一方で過剰な影響力を持とうとする者には急速に負担が重くなる。
結果として、民主主義に「声の強さ」と「公平さ」が同時に実現する。
このモデルは、市場の価格メカニズムを政治の意思決定に応用したものであり、“参加の自由”をより公正に分配する仕組みである。
もしくは、民主主義発祥の地であるギリシア・アテナでおこなわれていた陶片追放という手もある。
選挙人が投票所で、通常の投票用紙か 落選させたい候補者名を記載する追放投票用紙 いずれかを選んで投票する。
集計は、通常の得票数から追放得票数を差し引いて当落を決定する。
候補者全員の最終集計得票数がマイナスとなった場合でも、従来通りにマイナス得票数が少ない候補者から当選とする。
投票したい候補がいないから投票に行かないという理由もなくなる手である。
そしてデジタル時代、もうひとつの戦場は「データ」である。
GoogleやMetaといった巨大IT企業は、人々の行動データを独占的に所有し、莫大な利益を上げている。
著者らはこれを「セイレーンサーバー」と呼び、ユーザーを「テクノロジー農奴」と表現した。
私たちは毎日、SNSや検索、位置情報などを通じて企業に”情報”と“労働”を提供しているにもかかわらず、その見返りを得ていない。
著者たちは、データ生産者に正当な報酬と交渉権を与える「データ労働者の組合」構想を提案する。
ユーザー側が一方的にデータの供給を止めることができ、データ提供の見返りとして対価を支払う契約を企業に義務化させる。
例えば、オンラインのゲームの達人たちが獲得したゲームのスキルで生計が立てられるようになれば、ゲーム依存症も立派な経済活動となる。
「承認欲求が広告収入として機能するなら、娯楽の才能も収入につながるはずだ。」
これは、デジタル資本主義の搾取構造を正すための、まさに現代的な“労働運動”である。
この二つの制度──QVとデータ労働──を貫く思想は一つだ。
「独占が自由を奪い、共有が自由を取り戻す」
政治も経済も情報も、すべては“誰かの所有物”ではなく“みんなの参加空間”であるべきだ。
支配ではなく共創によって動く社会。
それこそが、ラディカル・マーケットが描く「脱・私有財産の世紀」の核心である。
社会の可能性を開くには、社会をラディカルに再設計することに私たちが心を開かなければならない。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
現在の経済活動や資本主義に対して、違った視点を提供してくれる書籍である。

スコット・ギャロウェイ著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』
GAFAは単なるテクノロジー企業ではなく、現代社会を構造的に変革した「支配者」である。
※現在では、アメリカを代表するテック企業7社(GAFAM+エヌビディアとテスラ)で「マグニフィセント・セブン」なんて呼び方も。
近年では、OpenAIといったAIサービスの台頭も見逃せない。
四騎士はビジネスや社会、地球にきわめて大きな影響を与えている。 もはや政府や法律でさえ、これら四騎士の快進撃を止めるには無力なように見える。
スコット・ギャロウェイ著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』
未来を生きる我々に求められるのは、テック企業群の利便性を享受しつつも、その裏に潜むリスクを見抜く冷静な視点である。
技術は使うモノであって、使われるようになってはいけない。
デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』
私たちは、誰でも貧すれば鈍するし、鈍すれば貧する。
闇バイトによる民家や証券口座の襲撃数が増えれば、防犯対策の費用増加や知り合いに被害者が出てくる確率も上がっていく。
生活保護者、年金受給者といった税金や補助金の利用者が増えれば増えるほど、国民の税負担も増えていく。
国家間~1つの家庭といったどの視点(マクロ、ミクロ)から見ても、ピリピリしてていいことはないのだ。
相互連関の高まっている地球上では、「どこか遠くで」起きた問題は、あっという間に「どこにでもある」問題になるのである。
デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』
岡奈津子 著『〈賄賂〉のある暮らし』
本書は、ソ連崩壊後のカザフスタンが経験した劇的な社会・経済変革を、「賄賂」という独自の切り口から深く掘り下げた研究である。
この30年間で、国のあり方や人々の生活がどのように変化したかを「賄賂」というレンズを通して詳細に描いている。
日本というレンズでは文化や価値観として許されざる行為も「非公式な問題解決手段」として機能している国もある。
すなわち、「賄賂」は公式制度の機能不全を埋める「現実的解決手段」である。
「本来は、医者は順番通りに診察しなければならない。でも実際には順番など誰も守らない。誰かの紹介とか、カネを払ったとか、そういう患者を優先します」。
岡奈津子 著『〈賄賂〉のある暮らし』
ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著
『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』
ゲームメカニクスの理解は、ビジネスや社会問題の解決にも役立つ。
投票制度やインセンティブ設計など、ゲーム理論はビジネスや政治の現実課題にも応用可能である。
本書の洞察とアイデアは、ゲーム外にも応用できる。 議論で2つの立場がはっきり対立しているとき、どのように解決できるか? 複数の候補者がいる選挙で、当選者をどのように決定するべきか? どのような経済的インセンティブがあれば富の分配が一番うまくできるか? すべての人に公平性を保証する正しい方法は何か? これらは現代社会のジレンマであり、ゲームデザイナーが日常的に取り組む問題でもある。
ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』
オークションはゲームシステムとして多く取り入れられている。
それは現実でも同じだ。ただし、のめり込みすぎてはいけない。
まとめ
✅ 資本主義の停滞は「所有の独占」に原因がある。
✅ 財産・投票・データを共有化することで新しい競争原理を取り戻せる。
✅ 「支配なき公正社会」は、ラディカルな制度改革から始まる。
真に競争的で、開かれた、自由な市場を創造すれば、劇的に格差を減らすことができて、繁栄を高められるし、社会を分断しているイデオロギーと社会の対立も解消できる。
エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』
⇒ 「所有とは、独占ではなく共有の約束である」
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆

