- 投稿日:2026/04/23
初めまして!シロマサルです。
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「なぜモノは安く、早く、世界中に届くのか?」
「物流は単なる裏方なのか、それとも経済の主役なのか?」
今回はマルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』2022年発行をつまみ食いします。
著者:マルク・レヴィンソン
著名な経済学者であり、ジャーナリスト、歴史家。『ハーバード・ビジネス・レビュー』『ニューヨーク・タイムズ』『フォーリン・アフェアーズ』などに寄稿している。複雑な経済・財政問題を、一般市民にもわかりやすく解説することに定評がある
✅ 物流の主役はモノから情報へ移った。
✅ 効率重視の時代は終わり、回復力が価値になる。
✅ 物流は経済の神経系である。
洗濯機から古紙に至るあらゆる貨物を入れた鉄の箱「コンテナ」を積み込み、遠く離れた港と港を結ぶ定期航路を展開している。
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
今回は、物流の200年の歴史を通じて、グローバル化の正体と現代経済の転換点を読み解く。
本記事を読めば、物流が単なるコストではなく、価値を生む中枢へ変わった理由が見えてくる。
物流の世界史
モノは勝手に動いてくれない。運び手が必要だ。
一連の新型船が貨物を満載すれば、どんな船より国際物流を低コストにできるからだ。世界経済が拡大して長距離貿易が増えれば、こうしたコスト優位がシェア拡大につながる
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
19世紀から現代に至るまでのグローバリゼーションを四つの異なる段階(フェーズ)に整理し、それぞれの時代における物流の役割を定義している。

物流がグローバル化を駆動した時代
価値連鎖(バリューチェーン)は経済、ビジネスにおいて必須知識だ。
1980年代後半から始まる時代の特徴は、複雑なバリューチェーンが世界経済を結びつけたことにある。国際企業はバリューチェーンを生み出す過程で生産の多くをヨーロッパ・北米・日本から、東欧・メキシコ・中国・東南アジアなど、低賃金で企業に有利な労働法制の国に移していった。
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
⇒ 物流は世界を物理的に一つにした原動力である。
19世紀、蒸気船と鉄道の登場によって、人類は初めて「距離」という制約を大きく乗り越えた。
それまで地域内で完結していた経済は、石炭、穀物、綿花といったバルク貨物の大量輸送によって国境を越え、国家間の分業が進んでいく。
この段階のグローバル化において、物流の役割は極めて単純で明快であった。
より多くのモノを、より遠くへ、より安く運ぶこと。
それ自体が経済成長を生み、世界を豊かにするエンジンとなった。
20世紀後半にはコンテナ革命が起こり、物流はさらに加速する。
港湾作業の標準化によって輸送コストは劇的に下がり、製造工程は世界中へ分散された。
グローバル・バリューチェーンは、「安く、早く、確実に運べる」という前提の上に成立していたのである。
効率化の行き着く先と、その限界
笑顔は立場や状況で意味合いが変わる。
海運業に補助金がつぎ込まれて、グローバル化は採算がとれるようになった。一方で国際貿易に補助金が投じられることで、グローバル化は対立をも生み出した。
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
⇒ 効率を追い求めた物流は、やがて成長の壁に突き当たる。
コンテナ革命は、物流史における最大の成功体験であった。
貿易における「補助金」の定義ははっきりしない。工場を誘致するための政府補助金のようにあからさまな補助金もあれば、外国の顧客に輸出品を買ってもらうための銀行融資の政府保証などは、借り手が返済不能に陥って納税者に不良債権のツケが回ったりしない限り、人目につくことはない。
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
しかし、その成功モデルは永続しなかった。
2008年の金融危機を境に、世界の貿易量は伸び悩み、物理的な物流拡大は飽和点に達する。
それでも業界は、さらなる効率を求め、巨大コンテナ船への投資を続けた。
結果として、港湾の混雑やインフラ負荷が増大し、柔軟性は失われていった。
効率を高めるはずの投資が、逆にリスクを拡大させる皮肉な状況が生まれたのである。
この問題を決定的に露呈させたのが、パンデミックや地政学リスクであった。
在庫を極限まで削るJITは、平時には合理的だが、ひとたび供給が止まれば機能しない。
そこで注目されるようになったのが、備えを持つJICという発想である。
▼ジャストインタイム(JIT)物流
トヨタ生産方式を応用し、「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ」配送する高効率システムのこと。在庫を最小限に抑えてコストを削減し、コンビニ等の多頻度小口配送に活用されている。
現物を扱う商売をしている者にとって、倉庫の中で動かない商品は負債でしかない。
だが、ひとたび供給が止まれば生産活動が出来なくなる。
今度は何もできない「負債」が発生する。
▼ジャストインケース(Just In Case: JIC)戦略
物流・サプライチェーン管理の用語で、「万が一」の事態(パンデミックや地政学リスク)に備えて在庫を多く抱える戦略のこと。
会社を運営するものが余剰資金を内部留保したがるのに近い。
しかし、抱えすぎるのは正しく投資や会社活動していないと思われることになる。(めんどくさいね。だが、貯めたものはいつか放出されるか無価値になる。)
話を戻すと、効率一辺倒の思想は終わりを迎え、安定性や回復力をどう組み込むかが、新たな課題となった。
物流は「モノ」から「情報」を束ねる神経系へ
「産めよ、増えよ、地に満ちよ」:旧約聖書の『創世記』第1章28節より
有形物の需要を減少させたもう一つの要因は、商品からサービスへの転換である。
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
⇒ これからの物流は、運ぶ装置ではなく考える仕組みである。
第四のグローバリゼーションにおいて、価値の源泉は明確に変化した。
インターネットの通信網が世界中で整備され、モノよりも情報がいち早く届くようになった。
製造や輸送といった中流工程の付加価値は低下し、研究開発、デザイン、ブランド、データといった上流・下流工程に価値が集中している。
この構造を象徴するのがスマイルカーブである。
スマイルカーブ(Smile Curve):製造業のバリューチェーンにおいて、企画・開発(川上)と販売・サービス(川下)の利益率が高く、組み立て・製造(中間)の利益率が低い傾向をグラフ化したもの。
引用画像:日経クロステック記事:スマイルカーブと逆スマイルカーブ
バリューチェーンにおいて、付加価値は「中流(製造・輸送)」で最も低く、「上流(研究開発・デザイン)」と「下流(マーケティング・アフターサービス)」で最も高くなる傾向がある。
職人の時代は、中流(製造・輸送)が最も重要な価値を持っていた。
同時に行商人や運び屋の時代でもあった。
人が必要で、運ぶにも属人性の高い技術が必要だった。
上の図でいうところの山なりのカーブだった。
組み立ての自動化や国家間の連携や技術革新によって、物流の効率化が進んだ。
人件費の安い海外工場移転やOEM(Original Equipment Manufacturing/Manufacturer:委託者のブランドで製品を製造する手法、またはその受託メーカーを指す。)、自動化、フィジカルAIも同じだ。
「素材(技術・知財)」や「販売(ブランディング・流通)」といった両端の価値が相対的に上昇し、スマイル(ニッコリ顔)のようなカーブを描くようになったということである。
とにかく「始まりのアイデア」と「商品をアートにする技術」の方が多くのお金を持つようになった。
元々製造の世界にいた私にとっては、なんと失礼な!…と思う話である。
だが、事実であることを私は否定できない。
安価な輸送に製造業が恩恵を受けたのも事実だ。
かつては画期的・革新的だった技術や作品が、一般化・陳腐化し、後世では「普通のモノ」として扱われるようになることは世の常だ。
「革新」が「日常」になる過程で、技術や才能は特別なものでなくなる。
つまり「モノを動かす」だけでは利益は生まれない。
重要なのは、サプライチェーン全体をデータで可視化し、不確実性を管理する能力である。
現代の物流は、経済の血管ではなく神経系に近い。
異常を察知し、情報を集約し、意思決定を支える役割を担っている。
だからこそ物流は、削減すべきコストではなく、競争力そのものになりつつある。
情報を制御できる企業、そして国家が、これからの不安定な世界で優位に立つ。
物流の進化とは、世界の「考え方」が変わったことの表れなのである。
電子書籍、シェアリングエコノミーも同じようにモノやデータの共有、現物を取り扱わず、データのやりとりのみの株式や暗号資産。
無在庫の越境EC、インフレによる中古品の需要拡大、ミニマリズム、AIサービス。
「モノ」から「情報(物語)」に動き始めた兆候はいくつもある。
もし、世界的な破滅が起きた時、おそらく我々が生きている間までに今の生活水準に戻ることはないだろう。

沢辺有司著『いちばんやさしい地経学の本』
こちらは地政学と経済に注目した書籍。
世界は予想以上につながっている。
各国の共通する目標は、国益を守ることでしょう。国益を守るためには、他国に依存しないことが理想となります。エネルギーや食料にしても、究極的には自給自足が理想であり、それが最大の防御になります。
沢辺有司著『いちばんやさしい地経学の本』
奥山真司著『新地政学 サクッとわかるビジネス教養』
地政学は国際政治を考察するにあたって、その地理的条件を重視する学問。
地経学は地理学と経済学、そして政治学を組み合わせた学問である。
地政学とは、簡単にいうと「国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考える」アプローチです。国際政治やグローバル経済などでの国の行動には、地理的な要素が深く関わっているのです。
奥山真司著『新地政学 サクッとわかるビジネス教養』
エドワード・チャンセラー著『バブルの歴史』
南海泡沫事件はまさに物流と投機によって起きたバブルである。
南海会社の株価が「実態のない利益」の誇張と過剰な配当の約束が相まって、株価は急騰し、利益が期待外れだったことで株価は急落、多数の破産者や社会的混乱が生まれた。
ちなみに有名な天才科学者のアイザック・ニュートンも南海株で大損害を被っている。
喧嘩と火事が江戸の華なら、バブルと暴落は経済の華といえるのではないだろうか。
エドワード・チャンセラー著『バブルの歴史』
大野耐一著『トヨタ生産方式』
トヨタを押し上げた一つの要因が「トヨタ生産方式」である。
通称:TPS(Toyota Production Systemの略。)
著者・大野耐一はトヨタ生産方式をつくり上げた世界的にも有名な人物である。
しかし、そのうちのジャストインタイム(Just In Time)の脆弱性がコロナ下で浮き彫りになった。
「後工程が前工程に、必要なものを、必要なとき、必要なだけ引き取りに行く」
大野耐一著『トヨタ生産方式』
必要なものを、必要な時に、必要なだけ。
理想的な生産体制なのだが、輸入輸出の物流が止まってしまうと、素材や部品の在庫がないため、途端に作業できない時間が大量に発生してしまった。
すべての道具というものは、それがよい道具であればあるほど、すばらしい効果を発揮するものだが、ひとつまちがうと、逆効果をもたらすものである。
大野耐一著『トヨタ生産方式』
まとめ
✅ 物流の主役はモノから情報へ移った。
✅ 効率重視の時代は終わり、回復力が価値になる。
✅ 物流は経済の神経系である。
第四のグローバル化でサービス産業や情報産業の労働者が得る所得増は第三のグローバル化ほど大きくないだろうが、所得格差がなくなることはないだろう。
マルク・レヴィンソン著『物流の世界史―グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?』
⇒ 主役はモノではなく情報である。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆
