- 投稿日:2024/04/30
- 更新日:2025/09/29

はじめに
野外で食料を調達して食べることを「野食(やしょく)」と言います。
野食は
・食に対する理解が深まる
・サイエンスに対する理解が深まる
・地球と自分の繋がりを直に感じられる
・最終的に生きている実感を得られる(食育)
まさしくリベラルアーツ(教養的)な学問です。趣味として非常にオススメ出来ます。
※なお、本記事は昆虫を捕って食べる内容です。
苦手な方はブラウザバックしてください。
野生の杏仁豆腐とは?
フェモラータオオモブトハムシ(以降フェモラータと略します)のことです。成虫は虹色の綺麗な虫です。幼虫はカブトムシの幼虫みたいな見た目をしています。今回食べるのは幼虫の方です。
STEP1 杏仁豆腐をゲットせよ
採集場所の選定
フェモラータは外来種です。本来は日本に生息していませんが、現在は広がりを見せ、関西地方や東海地方に侵入しているようです。私が知っている限りでは三重県松坂市と愛知県名古屋市に生息しています。
採集場所として河原のクズというツタ状の植物に虫コブと呼ばれる巣を作ります。
↑こんな感じです。
日本における生活環は研究されていませんが、2~4月頃が食べ頃とされています。
持ち物
✅剪定バサミ(必須)
クズの切断、解体に必須です。ものによっては太めなので1,000~1,500円程度の価格帯くらいの性能は欲しいところ。
✅運動靴、長袖(必須)
河原を歩き回ります。運動靴は必須でしょう。植物の種子(引っ付き虫)がたくさんつきますが、諦めてください。
また、野外活動の基本として肌を露出させてはいけません。長袖・長ズボンで活動しましょう。
季節によっては寒かったり、暑かったりするので、適宜防寒具や熱中症対策、水分補給などは準備してください。体感ですが、季節的に寒いことが多いみたいです。
✅ジップロック(必須)
フェモラータは移動性はほとんどありませんが、確実に密封して持ち帰ってください。その場で調理する場合は調理器具を持って行ってください。
✅ブルーシート(重要度高)
今回は私は近場の百均で急遽購入しましたが、買って良かったと思ってます。色々便利なのであったほうがいいでしょう。
✅ミニのこぎり(あれば程度)
クズを解体するときにあったほうが便利かもしれません。根性と握力で解決するので、ない場合は鍛えておいてください。
解体後の様子
虫コブ内に部屋を作って潜んでます。クズ切断時に切断してしまわないように注意しましょう。
出来高
あいにくの雨だったため、あまり採集できませんでした。たぶん実稼働は90分程度です。2人で行ってこの量なので、出来高は少ないですね。
虫コブを探す作業と虫コブごと採取する作業はすぐ終わるので、基本的には95%くらいが解体の作業です。天気が良ければもっと効率よく取れたと思います。
注意点
✅外来種の扱いについて
前述のようにフェモラータは外来種です。2024年4月現在では特定外来生物には指定されていないので、生きたまま輸送することは可能ですが、むやみな拡散は絶対にやめましょう。
その場で調理するか、脱出対策をして持ち帰ってたうえで確実にすべて調理or殺処分するようにしてください。
とくにクズを持ち帰って解体を自宅で行う場合は、解体後のクズをその辺に放置する行為は絶対に辞めてください。
✅生息地の具体的な場所について
理由の詳細は後述しますが、生き物を採取する場合において具体的な生息地は基本的に教えてもらえないし、聞くこと自体がマナー違反です。
本種は外来種であるため、ある程度の生息地情報がオープンになっているので、少し関係のある人なら具体的に教えてもらえるかもしれません。
とはいえSNSなどで関係性の薄い人に尋ねる行為は基本的に控えてください。
✅生息地について細かい話(読み飛ばしOK)
昆虫採集は生態系サービスから直接恩恵を預かる趣味です。
特にネットで関わりの薄い人だと、相手がどんな人かわからないので、最悪は教えた相手が乱獲したり生息地を荒らしたりする可能性があります。
そのため、上記のように具体的な生息地は教えてもらえないのが普通ですし、関係性の薄い人に聞いちゃう行為は信頼を落としかねません。
(昆虫自体の生態や、どういう環境に生息しているかは聞くことは問題ありません。むしろ喜ぶので質問してあげてください)
じゃあ、どうやって目当ての昆虫(例えば日本在来のカブトムシとかクワガタ等)の捕り方教えてもらえるの?って思った人もいるかと思います。
その場合は大きく2つのパターンで
1.関係性の深い人から直接口コミで教えてもらう
⇒地元の人やサークル、学校の知り合いなどから直接教えてもらいます。
私自身も大学時代には先輩や同級生、後輩にも色んな生息地を教えてもらいました。具体的な生息地は、前述のように乱獲する、生息地を荒らすなどの基本的な採取や生態系に関する理解が無い人には教えられません。
逆に教える側になった時には、こういう条件をクリアして教えてもらっていたんだなと実感できました。
2.自力で発見する
⇒昆虫の生態と環境の様子からいそうな場所を類推します。具体的な場所を教えてもらっていても、この能力がないと結局採集に至らないので、いずれにせよ昆虫の生態や環境全体に対する理解は最低限必要です。
今はGoogleマップなどで事前調査がかなり、簡単かつ精度が高くできるので、活用しましょう。
どちらの場合においても実は普段からコツコツと公園を徘徊したり、コミュニティに参加したりが必要で、意外と昆虫採集って日ごろの勉強や鍛錬の成果が出る継続的な趣味だったりします。
STEP2 フェモラータを調理せよ
正直この昆虫のポテンシャルを舐めてました。今回は捕獲量が少なかったため、揚げ焼きにしたのですが、めちゃくちゃ美味しいです。香ばしいカシューナッツみたいな感じなのですが、外皮独特の食感と中身の油分がマッチしてる感じですね。
↑揚げ焼きにして塩コショウしたり、クラッカーに乗せたり。
シンプルな味付けな分、素材の旨味が堪能できます。
多分どう調理しても美味しいと思います。バター炒めが美味しいとの報告も聞いているので、次回は試したいところ。
杏仁感を楽しみたいなら、後述の工程が入るので茹でがイイのではないかなと思います。
STEP3 加熱後のフェモラータを放置せよ
さて、STEP2までならただの美味しい昆虫なのですが、フェモラータのすごいところはさらにあります。表題の通り、杏仁豆腐のような臭いが発生するのです。
杏仁豆腐感を出すためにはこの工程が必要です。
私の体感では加熱後に冷蔵庫で50~70時間程度寝かせると、かなりの杏仁豆腐臭が発生します。
加熱後に冷蔵保存が必要なので、油を使うと油の酸化臭が出てしまうため、茹でフェモラータを冷蔵保存するのがイイと思います。
FINALSTEP 杏仁豆腐を体感せよ
さて、ここまで前準備をしたらいよいよ野生の杏仁豆腐とご対面です。
こちらは以前にも紹介したTAKEOさんのフェモ杏仁(限定メニューなのでで常にあるわけではないです)。杏仁豆腐より杏仁感のあるフェモラータが存在感を放ちます。
私はホットケーキの乗せたり、ヨーグルトにトッピングしたりで楽しみました。シナモンや小麦粉系とは相性良さそうなので、本物のイモムシパンとか作ってみたいですね。
個人的には加熱直後の味のほうが好きです(杏仁感を引き出すときに、虫味も強めに出てしまいます)。
終わりに
今回は野食の虫編でした。個人的に虫は低難度なので、初心者にオススメ出来るのですが、見た目の問題からかハードルが高いと感じる人が多いらしいです。
逆に言うと見た目の問題を気にしなければ、やはり初心者向けなので皆さん是非チャレンジしてみてください。
はじめにでも書いてあるように野食はリベラルアーツど真ん中!せっかくリベ大にいるので是非とも履修しましょう!
過去の野食リンク
✅植物編
・ノビル
・銀杏
✅キノコ編
・毒キノコ