- 投稿日:2024/09/26
- 更新日:2025/10/09
こんにちは。
名古屋市守山区で整体院を経営している理学療法士のきむです。
今回のテーマは「肩こり」です。
リベシティの中でも、肩こりで悩んでいる方は多いではないでしょうか?
肩こりは現代の生活習慣やデスクワークの増加により、多くの人が悩まされる症状です。
単なる筋肉の緊張と捉えがちですが、肩こりの原因は多岐にわたり、適切なアプローチを取らないと慢性化することも少なくありません。
今回は、肩こりのメカニズムと、それを解消するための効果的なアプローチに加え、ケンダルの姿勢評価を取り入れた姿勢改善の重要性について解説します。
肩こりの原因
肩こりは、一般的に僧帽筋や肩甲挙筋の緊張が主な原因として認識されていますが、これだけが原因ではありません。
以下に、肩こりの原因とそれに関連する筋肉や要因を詳しく説明します。
1. 僧帽筋と肩甲挙筋の役割
僧帽筋(そうぼうきん):この筋肉は首から肩、背中にかけて広がっており、肩甲骨を安定させる役割を持っています。長時間のデスクワークや不良姿勢で緊張しやすい部位です。特に肩の上部が凝る感覚は、僧帽筋の緊張によるものです。
肩甲挙筋(けんこうきょきん):肩甲骨を持ち上げる筋肉で、肩こりの際にはこの筋肉が緊張して硬くなることが多いです。長時間の電話やデスクワークで頭や肩を固定する姿勢は、肩甲挙筋に負担をかけます。

2. 肩こりの複合的な要因
ただし、僧帽筋や肩甲挙筋の緊張だけで肩こりが起こるわけではありません。
肩こりには以下のような複合的な要因が関与しています。
不良姿勢:長時間のデスクワークやスマートフォンの使用によって、首や肩が前方に突き出た「猫背姿勢」になると、首や肩周辺の筋肉に負荷がかかり、筋肉の緊張が生じます。
筋力の低下:肩甲骨や肩関節を支える筋肉、特に背中の深部にある筋肉(ローテーターカフや菱形筋)が弱くなると、肩の周囲に負担が集中し、肩こりが発生しやすくなります。
血行不良:同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が硬くなり、血流が悪くなります。これにより、老廃物がたまりやすくなり、筋肉の緊張がさらに増します。
精神的ストレス:ストレスや緊張は自律神経の乱れを引き起こし、筋肉の緊張を促進します。肩こりは心理的な影響も強く受けるため、精神的なストレスも大きな要因です。
3. その他の関与する筋肉
肩こりには、僧帽筋や肩甲挙筋だけでなく、次のような筋肉も関与しています。
菱形筋(りょうけいきん):肩甲骨を引き寄せる筋肉で、この筋肉が硬くなると肩甲骨が動きにくくなり、肩こりを悪化させます。
小胸筋(しょうきょうきん):胸の前にある小胸筋が緊張すると、肩甲骨の動きを制限し、肩や首に負担をかけます。
後頭下筋群:頭を支える筋肉で、特に頭が前に出た姿勢になるとこの筋肉が緊張し、首こりや肩こりを引き起こします。
4.肩こりの発症メカニズム
肩こりは以下のような段階で発生します。
①長時間のデスクワークや不良姿勢により、上位頚椎の可動域が制限される。
②関節の硬化と周辺組織の不健康化が進行。
③神経が過敏化し、筋肉の緊張が増加。
④肩こりが発生し、首や頭部にも影響を及ぼす。
5. 肩こりを引き起こす神経
僧帽筋を支配する神経は、副神経と頚神経叢(第2-4頚神経)です。
これらの神経が過度に刺激されることで肩こりが発生します。
6. 首こり・頭痛との関係
肩こりはしばしば首こりや緊張性頭痛を引き起こします。
後頭神経や三叉神経が関与し、肩こりが進行すると首や頭に痛みが広がることが多いです。
ケンダルの姿勢評価と肩こりの関連性
肩こりの発症には、姿勢が大きく関与しています。
ケンダルの姿勢評価法は、筋骨格系の不均衡(マッスルインバランス)や姿勢の問題を評価するための標準的な方法です。
この評価法を用いることで、肩こりを引き起こす姿勢の乱れを特定し、改善に向けた具体的なアプローチを行うことが可能です。
ケンダルの姿勢評価の基本
ケンダルの姿勢評価は、特に姿勢の不良が肩こりや体の不調にどのように影響を与えているかを分析するために使用されます。
評価の際に注目する主なポイントは以下の通りです。
カイホロードシス(後弯前弯型): 胸椎後弯と腰椎前弯が組み合わさる。
スエーバック(後弯平坦型): 骨盤が後傾し、体幹が後方に移動し、内旋肩を合併しやすい。
フラットバック(平背型): 腰椎の前弯が少なく、背中が平坦。
ロードシス(前弯型): 骨盤の前傾と腰椎前弯が強調される。
不良姿勢の状態が続くと、肩こりや首の痛み、さらに全身の不調に繋がることがあります。ケンダルの姿勢評価に基づいて姿勢の乱れを修正することは、肩こりの改善に不可欠です。
ケンダル姿勢評価の結果に基づく対策
全ての共通点:前方頭方姿勢(フォワードヘッド):
頭が前方に出る姿勢は、僧帽筋上部や肩甲挙筋に過度の負荷をかけ、肩こりの原因になります。この場合、頚椎のモビリティ改善とストレッチが推奨されます。
円背(過度の胸椎前弯):
背中が丸まっている姿勢では、僧帽筋の下部や背筋が弱くなり、肩甲骨の動きが制限されます。胸椎の伸展エクササイズを取り入れて、肩甲骨の可動性を改善します。
内旋肩:
肩が前方に巻き込まれる「内旋肩」は、肩甲骨周囲の筋肉に過度の負担をかけ、肩こりを引き起こします。これには、肩甲骨周りの筋肉の柔軟性を高めるストレッチが効果的です。
肩こりの解消アプローチ
1. 上位頚椎と胸椎の可動域を改善する徒手療法
頚椎や胸椎の可動域が制限されると、肩こりを悪化させます。徒手療法では、これらの部位のモビリティを改善し、正常な動きを取り戻すことで肩への負担を軽減します。

2. 姿勢改善のための運動療法
正しい姿勢を保つためには、日常的な姿勢改善が重要です。ケンダルの姿勢評価で指摘された問題に基づいて、筋力強化エクササイズやストレッチを行い、肩こりの原因を取り除きます。

3. 肩甲骨周りの柔軟性を向上させる運動
肩甲骨の可動性が悪くなると、肩周辺の筋肉が硬直します。肩甲骨の動きを改善するエクササイズを取り入れ、肩こりの軽減を図ります。
まとめ
いかがでしたか?
肩こりは単なる筋肉の緊張だけではなく、不良姿勢や関節可動域の制限が大きな要因です。
ケンダルの姿勢評価を用いた姿勢分析は、肩こりの根本的な原因を明らかにし、徒手療法と運動療法を組み合わせたトータルアプローチが効果的です。
長期間の肩こりに悩んでいる方は、専門家の指導を受け、正しい姿勢と筋力強化を行うことで根本的な解決が可能です。
トータルなアプローチで、肩こりをしっかりと解消しましょう。
今回の内容は少し難しかったかもしれません。分からないことがありましたら、お気軽にご質問下さい。
理学療法士17年間の経験と知識を活かし、痛みに関連した投稿をしています。
痛みで悩んでいる方は、是非、ご覧ください。
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参考文献
Kendall, F. P., McCreary, E. K., Provance, P. G., Rodgers, M. M., & Romani, W. A. (2005). Muscles: Testing and Function, with Posture and Pain (5th ed.). Lippincott Williams & Wilkins.
ケンダルの姿勢評価と筋機能に関する基本的なリソース。この本では、姿勢分析や徒手療法の方法についても詳しく説明されています。
Janda, V. (1983). Muscle Function Testing. Butterworth-Heinemann.
姿勢に関連する筋機能評価や姿勢分析の古典的文献。肩こりなどの筋骨格系障害に対するアプローチを網羅。
Magee, D. J. (2013). Orthopedic Physical Assessment (6th ed.). Elsevier.
関節の徒手療法や評価法についての包括的なリファレンス。肩こりや頚椎の可動域制限に対するアプローチも詳細に記載。
Travell, J. G., & Simons, D. G. (1999). Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual (Vol. 1: Upper Half of Body). Lippincott Williams & Wilkins.
肩こりや首の痛み、肩周りのトリガーポイントについて記載。
Brukner, P., & Khan, K. (2012). Clinical Sports Medicine (4th ed.). McGraw-Hill.
スポーツ医学に基づく筋骨格系の障害と治療法についての書籍。姿勢改善や運動療法についても詳しく解説。