• 投稿日:2024/10/18
  • 更新日:2025/10/09
(施術者向け)腰痛に潜む危険信号:イエローフラッグを見逃さないために

(施術者向け)腰痛に潜む危険信号:イエローフラッグを見逃さないために

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きむ@名古屋の痛み改善整体サロン

きむ@名古屋の痛み改善整体サロン

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要約
イエローフラッグは腰痛の慢性化リスクを示す心理社会的要因です。包括的な対話、段階的運動で自己効力感向上、心理的サポートが回復を促します。

こんにちは。

名古屋市守山区のリハビリ整体院を運営している理学療法士のきむです。

前回のノウハウ図書館では、レッドフラッグについて解説しました。レッドフラッグは、即時の医療的対応が必要な危険信号でしたが、今回取り上げるのはイエローフラッグです。イエローフラッグは、腰痛の慢性化リスクを高める心理的・社会的要因であり、これを見逃さないことが、施術効果を高めるために重要です。

医療現場では「トリアージ(triage)」という考え方が使われます。これはフランス語で「選別」を意味し、災害や救急の場面で患者の緊急度や重症度に基づき、治療の優先順位を決定するプロセスです。限られたリソース(時間、人員、設備)を効率よく活用することを目的としており、腰痛においても、レッドフラッグとイエローフラッグの識別はトリアージの一環として重要です

イエローフラッグとは?

イエローフラッグは、痛みの回復を妨げ、慢性痛に発展させる心理的・社会的要因です。これらが見逃されると、身体的な治療だけでは症状が改善しにくくなります。


代表的なイエローフラッグの要因:

恐怖回避思考:「動いたら悪化する」と考え、活動を避けてしまう。

ストレスや不安:仕事や家庭環境のストレスが、痛みを長引かせる。

否定的な思考:「この痛みはもう治らない」といった悲観的な見方。

社会的問題:職場のプレッシャーや人間関係のトラブルが要因になることも。

見逃してはいけない兆候

イエローフラッグを発見するには、クライアントの発言や行動に注意を払うことが重要です。

以下の兆候が見られる場合、施術者は特に慎重な対応が求められます。

「もう治らない」と悲観的な発言をしている痛みを恐れ、動くことを避けている仕事や生活でのストレスが溜まっている痛みについての過剰な不安を抱えている

イエローフラッグを見逃さないために私が徹底している3つのポイント

1. 包括的なコミュニケーションで心理的・社会的背景を把握する

イエローフラッグの兆候を見つけるには、単に身体の痛みを評価するだけでなく、クライアントとの丁寧な対話が不可欠です。

私はクライアントの生活習慣、仕事環境、家族関係などをヒアリングし、潜在的なストレス要因を把握することを心がけています。

特に、「痛みに対する不安や恐怖心」を早期に確認することで、活動回避思考に対応する準備が整います。

2. 段階的な運動療法の提供で自己効力感を高める

クライアントが「動くことで痛みが悪化する」という思考を持つことは、慢性痛につながる大きなリスクです。このため、私は徒手療法を活用した疼痛緩和と、無理のない運動から始める段階的なプランを提供します。少しずつ成功体験を積み重ねることで、患者の自己効力感を向上させます。

3. 心理的サポートの提供

ストレス管理法やリラクゼーションの指導を行います。


まとめ:イエローフラッグを見逃さない施術を

いかがでしたか?

レッドフラッグが緊急医療の必要性を示すのに対し、イエローフラッグは腰痛の慢性化リスクを示します。施術者は、身体だけでなくクライアントの心理・社会的背景にも目を向け、最適な治療を行う必要があります。

腰痛の改善には、心理的・社会的側面への理解が欠かせません。施術の現場でイエローフラッグを見逃さず、クライアントの回復をサポートしましょう。

次は何色のフラッグが登場するか、お楽しみに!


参考文献

Musculoskeletal Pain: Assessment, Prediction and Treatment (Mark Jones, Darren Rivett 著)

Mark Jonesの「クリニカルリーズニング」の理論は、臨床での評価と意思決定の重要性を強調しています。レッドフラッグやイエローフラッグの判別方法が詳細に解説されており、腰痛治療の適切なアプローチを学べます。

New Zealand acute low back pain guide (2004)

このガイドは、イエローフラッグに関する初期スクリーニングの具体例を提示しており、筋骨格系の痛みが長期化するリスクを減らすためのアプローチが含まれています。

"Early Identification and Management of Psychological Risk Factors (‘Yellow Flags’) in Patients With Low Back Pain" (Physical Therapy Journal)

この研究は、心理的リスク要因を早期に特定し、個別対応を行うことで治療効果が向上することを示しています。恐怖回避思考や不安感が治療結果に与える影響についても議論されています。

IASP (International Association for the Study of Pain) の研究

徒手療法において、心理的要因の見逃しが施術効果を制限するリスクについての議論がされています。患者の心理社会的状況の把握を強調し、施術の改善ポイントを提示しています。

理学療法士17年間の経験と知識を活かし、痛みに関連した投稿をしています。

痛みで悩んでいる方は、是非、ご覧ください。

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