- 投稿日:2025/01/31
- 更新日:2025/09/29

はじめに
節約には努力は不要というタイトルですが、残念ながら「こうすれば楽しく貯金できるよ♪」みたいな記事ではありません。
努力を必要とする節約をしてはいけないという話です。
✅資産形成の実態
✅多くの人がイメージするFIREが原理的には不可能である
✅人生と資産形成の関係
などを記載していきます。
資産形成の極意
皆さんに資産形成の極意をお伝えします。
収入-支出=資産
以上です。
お金持ちは案外ケチと言われることがありますが、因果が逆で、ケチで無駄な出費をしないから、資産が貯まりお金持ちになるのです。
では何故こんな当たり前で使い古されたことをわざわざ書こうと思ったのか?実は最近色んなコンテンツを見ているうちに、自分が割と稀な感性をしていることに気が付きました。
具体的には
小説phantomにて
主人公の華美が投資オフ会に参加した時、周囲の資産1億超えの老人たちが「水筒に水道水を詰める」「手作りのおにぎりを昼食として持参」「安いスニーカーを履いてる」姿を見て、(この人たちは資産を持っているのに、生活保護受給者と同じような生活をしているではないか)という感想を持つシーン。
橘玲氏の著作(※1)にて
まとまった金が欲しいなら簡単な方法がある。日本は人件費が高いので、1日16時間労働をする。次に家賃4万円程度の部屋に住み、可能な限り支出を抑える。そんな生活を5年もすればまとまった金が手に入るだろう。ただし、これを実行できる人間は少ない。
このエピソードを読んで私は「ああ~わかる~」となったのですが、世間的にはこのエピソードは少数派として描かれていたらしいです。
このように極限まで支出を減らす生活は「経済合理性の高い生活」と言えるでしょう。
自分では普通だと思ってたけど、結構ひかれたエピソードが
✅水道水を飲む(会社員時代は水筒にも汲んでました)
✅UNIQLOのフリースを15年以上着続ける(※2)
✅料理をまとめて作って、同じ料理を食べ続ける
このあたりです。
このような経済的合理性の高い生活をしていたので貯蓄率が高めで同年代のサラリーマンよりは資産形成できていました。今は楽しく無職をしています(FIREではない点については後述のFIREのパラドックスで、もう少し近況説明します)。CFが死んでいるので今後どうなるのかは全くの不明ですが(笑)
※1 残酷な世界で生き延びるたった一つの方法だった気がします。
違ったらご指摘ください。
※2 リベ友には穴の開いた靴を靴として機能しているからと履き続けて
いる猛者がいましたが、流石に私でも穴が開いたら買い換えます。
なお、件のリベ友も最近は靴を買い換えたようです。
貯める力の重要性
収入-支出=資産
この公式は絶対です。これ以外の資産形成の方法はありません。収入を増やすのは個々人の能力や社会情勢、運などの不確定要素が多く絡みます。また、急激に増やすことも難しいです。
一方で支出を減らすのは(ある一定ラインまでは)それほど難易度が高くなく、効果に確実性と一定性があります。リベシティにて家計管理が推奨されているのはこうした理由からです。
努力して節約してはいけない
さて、収入を増やすより支出を減らしたほうが良いといいましたが、ここで頑張って節約をしてはいけません。何故ならば頑張るということは無理をしている状態だからです。
賭博破壊録カイジ 1巻 第8話より
(皆さんもダイエットの反動でドカ食いしたことはありませんか?)
では努力せずに節約するとはどういうことなのでしょうか?
同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいい
幸福の資本論 P90
この基本原理に従い
エコノミークラスを利用するビルゲイツ(到着時間は同じだから)
銀行でドル⇔円の交換や、投資信託を購入せずにネット銀行や証券会社でETFを購入する(結果は同じ、手数料は桁違い)
といった例が挙げられます。
これらは節約の努力ではなく、経済合理的な行動です。
経済合理的に行動すれば、努力などしなくても自然と倹約することになります。
幸福の資本論 P91
経済合理的に行動していれば支出はかなり減らせるでしょう。日本は人件費の高い国なので、最低時給であったとしてもフルタイムで勤務していれば収入-支出がマイナスになることはありませんし、そこそこの資産形成が出来るハズです。
なぜ出来ない人が多いのか?
前置きが長くなりましたが、ここからが本題。経済合理的に行動すれば努力せずに資産形成できると言いましたが、中には「それが出来れば苦労はしねぇ!」と思っている人もいるでしょう。
なぜこのような事態が発生するのか?実はその答えは経済合理性の定義に隠されているのです。
同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいいというのは原則ですが、「同じ結果」とは何を指すのでしょうか?
私の個人的見解ですが、同じ結果とは、同じだけの価値を引き出せるということであると言えるでしょう。そして更に深堀すると、価値とは何か?という問いにぶち当たります。この問いについて、過去に記事に詳しくまとめていますが、端的に言うと価値には4象限あります。(下図参照)。
上記の図で右上を重視することが一般的には経済合理性が高いとされています。
しかしながら、実のところ同じ結果とは、人によって異なるのです。それは人によって価値観が異なり、何を重視するかが違うからです。
具体例で言うと前述の移動におけるグリーン車やファーストクラス、ビジネスクラスの話をしましょう。金持ちであっても到着時間が同じならば安い席を取るという事実がある一方で、資産家によっては高い席を取れと言います(学長も旅行では高い席に乗っていると発言していました)。
これは価値観の違いで、実利価値(いつ到着するか)だけではなく共感価値(道中の快適さ)に価値を見出しているからです。
大事なことは、自分自身で価値観を認識して、他者が創出した不要なニーズに踊らされないことです(右下と左上は不要なニーズが創出されがちです)。
FIREのパラドックス
さて、資産形成は同じ結果なら安いものを選ぶというシンプルな思想に支えられていることがわかりました。そして、そうした資産形成の終着点としてFIREが挙げられています。
ここでは"REを達成"し"FIは未達"の私がFIREのパラドックスについて語っていきたいと思います。FIREの4文字のうち2文字を達成しているので、進捗率50%(※3)ですから語る資格はあるでしょう。
※3 こういう人間は端的に「無職」の2文字で表現できる。
原理的にはFIRE出来る人は存在しない
収入-支出=資産
くどいようですがこの公式こそが資産形成のすべてです。そして、今までは支出のみについて記載してきました。そう、重要な収入について一切触れていません。
収入を得るためには人的資本を市場に投下しなくてはなりません(幸福の資本論など)。サラリーマンであれば、自分の時間を組織へ投下することを指します。一方で自営業であれば他者の課題を労働力を使って解決することで対価を得ます。これが稼ぐ力の本質です。
そして稼ぐ力を高めれば資本主義社会では周囲からも評価されます。周囲から評価されれば、自己肯定感が高まり、もっと稼ごうと努力することになります(これを私は無職力が低いと表現しています)。
詰まるところ、収入を増やして自己実現することは、資本主義社会におけるいわゆる成功者になるので、その地位を捨てることは難しいものです。
FIREの定義にもよりますが、世間でイメージされる「若い時にバリバリ働き巨額の資産を形成して、30代前半から悠々自適な生活を送る」というスタイルは以下の矛盾をはらんでいます。
✅REしてゆっくり生活したい人は短期間でFIできるほど稼ぐのが難しい
✅FI出来るほどの稼ぐ力がある人はREしてゆっくりするのに向いてない
FIREすることそれ自体を目的にしてはいけないのはこのためです。
資産形成が人生なのか?
超合理的な資産形成
たまに資産形成そのものを目的としている人がいますが、上記のことからあまりオススメは出来ません。それでも資産形成のみに特化するなら
・ひたすら長時間働く(16時間/日 350日/年 程度 年間5600時間)
・可能な限り安い家に住む(広さ、ぼろさは犠牲にする)
・食事は鍋と白米のみ(安さと栄養バランスは完璧)
のような生活をすれば年間100万程度の支出で収まるでしょう。
収入はコンビニバイトの時給を(深夜を含め)1200円としたとき、680万程度の年収となるので、手取りは520万程度です。
この手法を採用すれば、一切の能力と運を必要とせず(体力だけは必要ですが)に毎年420万の資産形成が出来ます。あとはオルカンでも買って運用しておけば10年で5000万円は硬いでしょう。
本気でFIREすること自体が目的なら実行するべきかと思います。
普通は採用しない超合理
しかし、リベシティでは資産形成はあくまで土台であって、目標は「幸せな小金持ちになること」として設定されています。
私自身も無駄こそが人生そのものだと思想の持ち主なので、「幸せな」という形容詞が素敵だなと思います。幸せとは人それぞれなので、個々で己の幸せを定義、追求する必要性はありますが、一つだけ言えることがあります。
それはお金がないと不幸だということ。
これまた使い古された言葉ではありますが、お金とは幸せを手に入れるアイテムではなく、不幸を回避するためのアイテムです。
どの程度必要なのかはさておき、多くの人が超合理の生き方をしないのは、お金がないという不幸を回避するために、その他の多くの不幸を受け入れる生き方をしなければならないからです。
しかしながら、極稀にお金がもたらす幸福がその他の不幸よりも多い人間がいるため、超合理の人間が全くいないとも言い切れないのが世の中の面白いところですね。
教養(リベラルアーツ)と生き方
最後に少しだけ資産形成と生き方の話題について書きます。資産形成は手段であって目的ではないため、最終的には各々が人生の目的を探さねばなりません。そんななか、近年着目されているのがリベラルアーツです。
リベラルアーツとは幅広い分野の体系的な学問を身に着けることで、自由になるための手段を指します。
複数領域を身に着けることで、基礎的なつながりからより深く考察が出来るようになるというわけです。
何かを専攻して勉強したことがある人ならわかると思いますが、該当分野だけでなく周辺分野の知識も必要となるので、自然と勉強せざるを得ない環境になります。
私自身も学生時代の専攻は進化生態学ですが、派生として動物分類学、行動経済学、近代西洋歴史、統計学などは基礎部分を勉強する必要がありました。
教養とは何か?
このお題だけで記事1本分くらいの長さになるので割愛しますが、個人的には「身の回りの色々な出来事に興味を持つ力」だと思っています。
リベラルアーツと教養は近接分野なので、どちらかを高めれば自然ともう片方の力も高まっていきます。
ではどのように高めればよいのでしょうか?
よくわからないけど、本を読んだり、人と会って話をしたり、知らない場所へ行ったり、やったことのないことをやってみれば良いのではないでしょうか。
単純明快な答えはおそらくないので、知っている人がいたら教えてください。
教養と共感価値
教養が高まれば価値4象限の共感価値(左下)を見出す力になります。そのため、お金をかけずに暇をつぶすことが出来ます。無職の力とどう違うのかと問われると難しいところですが、いずれにせよ生きているだけでお金がかかる現代では、必要な力かもしれません。
まとめ
✅節約に必要なのは努力ではなく、経済合理性
✅経済合理性を高めるには価値の本質を見抜く
✅経済合理性を追求することが人生の全てではない(無駄も大事)
参考コンテンツ
動画
両学長 リベラルアーツ大学
億のカネを作るシンプルな手順3STEP
【一言感想】
公務員や平均的な年収の会社員でも1億の資産を形成することは簡単です。 経済合理性に特化した生活の解説です(それでも比較的マイルド)。しかし、実行できる人は稀だと思います。【一言感想】
収入-支出=資産の重要性を20分弱説明してくれます。また、節約も苦行ではなく、経済合理性を追求すれば自然と達成でき、慣れるということも解説してくれます。
ゆる言語学ラジオ
トイレがクサい。
【一言感想】
経済合理性が高すぎる人は冷蔵庫はポートフォリオとか言い出します。
私は色々なところに共感できると言っていたら、どうやらそういう人は稀らしく、料理をまとめて作って同じ料理を毎日食べたり、買い物する日や調理器具を使う日が決まってるのは一般的ではないらしいです。
他の人の感想も聞きたいので、良ければコメントしてください。
積読チャンネル
金を貯めた先に、喜びはあるのか?
【一言感想】
後述のphantomの紹介動画。 本を読んだ後でも読む前でも楽しく視聴できると思います。Fラン大学就職チャンネル
私たちは売られた。
【一言感想】
テーマ型投資信託は同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいいという原則に反している話です。この話を見て「何を当たり前のことを言ってるんだ?」と思えるようになったら、訓練されたFラン大学就職チャンネルの視聴者です。
書籍
✅実用書
ジョナサン・マレシック (著)
吉嶺英美(訳)
なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか
【一言感想】
資本主義社会における稼ぐ力=人間能力という価値観へのアンチテーゼです。アメリカ社会の話ですが、日本でも同じような社会価値観なので、あるあると思いながら読むことが出来ます。特に7章の修道院の話はFIREのパラドックスへの一つの回答の形なので必見です。
橘玲
幸福の資本論
お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方
残酷な世界で生き延びるたった一つの方法
【一言感想】
リベ動画でも度々出てくる橘玲氏の著作。資産とは何か?幸せとは何か?生き方とは何か?の本質に迫っています。なかなか厳しいことが書いていますが、全く救いがないわけではないので、いくつか読んでおくと役に立つと思います。
特に退職する人や家を買う人は実行前に読んでおくと判断の指標になるかもしれません。
ホモ・ネーモ
働かない勇気
【一言感想】
おそらく「嫌われる勇気」のパロディで、哲人と青年の討論スタイルで話が展開していきます。現代社会は不要なニーズを作り出し、無駄に消費しているとの論を展開して労働は悪行であると断定します。全体の論として無職の私ですらストロングスタイルだとは思いますが、不要なニーズの形成には一部同意できる部分はあるので、4つの使用価値を見極めて不要なものを入手しないように生きていきたいと思いました。
✅エッセイ
内向型の頂点
億り人のひきこもり生活
【一言感想】
FIREのパラドックスを乗り越えてFIREした人のエッセイ。といっても、本を出しているので作家業という労働をしているとも考えられます。極めて稀なパターンだと思いますし、このライフスタイルが楽しそうと思う人も少ないでしょう。私はこのライフスタイルが可能なタイプの人間です。
✅小説
羽田圭介
phantom
【一言感想】
FIREを目指し倹約してETFを買い集める主人公と、その真逆の価値観で今に全力で自己投資する恋人の話。オンラインサロンの話なども出てくるので、どこかで共感ポイントが発生し、誰に感情移入するかで楽しみ方も変わります。私は主人公の華美に割と共感できました。
福澤徹三
死に金
【一言感想】
重病で死に瀕した反社会的人物の大金を巡る周囲の人々の話。作中の「本気で金を追い求めたもののみ、金が無意味と知る」というセリフが非常に含蓄に富んでいると思います。
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※注 ジョーク記事です