- 投稿日:2024/09/26
- 更新日:2025/09/29

はじめに
こんにちは、整形外科医のぽっぽです。
突然ですが、あなたの周りで「肘内障(ちゅうないしょう)」と診断されたお子さんはいませんか?
私が数年前、市中病院で当直勤務をしていた頃は、月に2〜3人ほどのお子さんが「肘内障の疑い」で夜間に受診していました。
そのうちの約95%は肘内障、残りの5%が骨折や脱臼でした。
肘内障は、小さなお子さんなら誰にでも起こり得るケガですが、意外と知られていないことが多いため、今回の記事を書くことにしました。
肘内障とは?
原因と症状
子どもの手を引っ張った直後に、腕を下げたまま動かさなくなる。
痛みで泣き出したり、痛くない方の手で腕を支えるような仕草を見せることもあります。
はっきりとした「受傷のエピソード(=きっかけ)」がなくても、肘内障になる場合もあります。
病態(どうして起こるの?)
肘の外側にある橈骨頭(とうこつとう)という骨が、靱帯から外れかかることで発生します。
特に2〜6歳の子どもに多く見られます。
診断の流れ
まずは問診で、ケガのきっかけや状況を確認します。
肘を少し曲げたまま腕を動かさず、肩・肘・手首すらも触らせてくれないことが多いです。
必要に応じて、レントゲン検査で骨折や脱臼などの異常がないかを確認します。
治療と経過
治療法
**徒手整復(としゅせいふく)**という、手で元に戻す処置を行います。
ほとんどの場合、1回の整復で正常に戻ります。もし何回か整復しても戻らない場合は、翌日以降に再診するよう指示します。
整復後は、普段通りに腕を使って大丈夫です。
稀に、病院に着いた頃には自然に整復されていることもあります。
予後(治った後の経過)
再発するお子さんもいますが、多くは6歳頃になると自然と再発しなくなります。
後遺症が残ることは基本的にありません。
全体として、予後は非常に良好です。
肘内障の典型的なパターン
日中に腕を引っ張られる
↓
その後、腕を動かさなくなってグズグズ…
↓
夜になっても様子がおかしく、寝かしつけても泣き止まない
↓
「これはおかしい!」と感じて、夜間救急を受診
こうした流れで夜間に来院されることが多く、中には深夜2時に来られたお子さんもいました。
子どもが急に腕を動かさなくなったら、それは異常です。
肘内障・骨折・脱臼のいずれにせよ、できるだけ早めに整形外科を受診してください。
⚠️骨折や脱臼の可能性があるサイン
以下のような場合は、肘内障以外(骨折や脱臼)の可能性が高くなります。
できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
⚠️机やジャングルジム、うんていなどから落ちた後にケガをした
⚠️肘の周囲にあざ(皮下出血)がある、または腫れている
もし骨折していた場合は、シーネ(副木)やギプスでの固定が必要になります。
骨の折れ方によっては、手術が必要になることもあります。
まとめ
特に小さな子どもは、自分でうまく説明ができないため、異変に気づいたら早めの受診が安心です。
整形外科に相談することで、お子さんの安心、そして親御さんの安心にもつながります。
余談:医師としての個人的な思い
当直勤務は、正直しんどいことも多いです。
でも、泣きながら受診した子どもが、整復後には笑顔で「バイバイ👋」と帰っていく姿を見るのは、
「医者を続けてきて良かったな☺️」と心から思える瞬間の一つです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
少しでも、皆さんのお役に立てば嬉しいです。
画像引用:日本整形外科学会HP
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