- 投稿日:2025/04/08
- 更新日:2025/09/29

はじめに
野食とは?
野外で食料を調達して食べることを「野食(やしょく)」と言います。
野食は
・食に対する理解が深まる
・サイエンスに対する理解が深まる
・地球と自分の繋がりを直に感じられる
・最終的に生きている実感を得られる(食育)
まさしくリベラルアーツ(教養的)な学問です。
趣味として非常にオススメ出来ます。
拾い食い日記初の遠征スタイルなので、前後編に分割します。
前編では、主にホタルイカの生態や必要な道具などを解説
後編では、実際に私が2025年4/1~4/3の0泊3日の旅行記を掲載予定です。
富山旅行を満喫したい人にもオススメとなっています。
STEP1 ホタルイカについて調査せよ
ホタルイカ
今回は魚介類です。虫より難易度が高いですね。
ホタルイカは開眼目に属する体長10cm程度の小型のイカです。
普段は海底200m~600mの深海に生息しており、夜中には海の表層まで餌を食べに来ています。1年性のイカで、春に産卵し、夏~秋にかけて成長、冬には生体になり、翌年の春に産卵してその一生を終えます。
特徴としてホタルイカの名前の通り、ホタルのように発光します。
発光は皮膚発光、眼発光、触腕発光の3種類あり、皮膚発光と眼発光は自分の影を消すための弱い発光、触腕発光は相手を威嚇するための強い発光と言われています。弱い発光は肉眼ではほとんど見えず、強い発光は青白い光で、暗闇でよく見えます。
富山湾の砂浜では春先に集団身投げと呼ばれるものが見られます。これは大量のホタルイカが砂浜に打ち上げられ触腕発光している光景です。
熱を伴わない化学反応による発光なので冷光(れいこう)と呼ばれます。
富山の漁法
富山湾は天然のいけすとも呼ばれ、岸近くから急激に深くなるのが特徴です。日本海に生息する約800種類の水産資源の内、約500種類が富山湾に生息しています。
ホタルイカはそんな富山湾で定置網漁法によって漁獲されます。これは産卵に来たホタルイカ達が、産卵後に再び深海へ戻る復路で捕獲するというものです。
我々が食するホタルイカ(スーパーで販売されているものも)は産卵後のイカで、寿命を迎える数日前のイカですので、サステイナブルな漁法と言えるでしょう。
ちなみに富山湾のホタルイカ群雄は天然記念物として指定されていますが、これはその「光景」が天然記念物であるので、ホタルイカ自体は天然記念物ではないため、食べることは違法ではありません。
参考HP|JF全漁連
個人で採取するなら
戻りイカを捕獲するには船と大掛かりな網が必要です。また、漁業権が必要になるので、現実的ではないでしょう。
個人で採取するのは、戻りイカではなく、戻ることも出来ずに、浜や漁港に打ち上げられるイカです。
余談ですが、オスは交接直後に力尽きて海の底で朽ちる個体がほとんどだそうですが、稀にオスも打ちあがるらしいです。スーパーで買うホタルイカは漁師の方々が選別しているので、メスしかいません。オスを見ることが出来るのも、現地採取のいいところと言えるでしょう。
ホタルイカ採取における注意点
野食系では毎度言ってますが採集地の注意点として
✅私有地に無断で入らない
特に、ホタルイカの身投げは観光としても有名で、他県ナンバーの車がわんさかと押し寄せてきます。また、基本的に深夜に行うため、近隣住民とトラブルとなるような無断駐車、騒音などは絶対に避けるべきです。
マナーを守って楽しく野食をしましょう。
✅必要以上に捕らない
ホタルイカは足が早く、日持ちしません。食べきれない量を持ち帰ればゴミとなります。死にかけのイカだから、別にいいじゃんと思うかもしれませんが、生態系というのは大きな輪で循環しています。
死骸も鳥や海洋生物への資源となります。実際に私たちが、明け方までいたときは、鳥たちが海辺の上空を飛んでいました。
たまに業者に売ろうとしてる人がいるらしいですが、砂を噛んでるかもしれない、オスが混ざってるかもしれない、そんなものが売れるわけはないので、自分で消費する分だけ捕ってください。
生で食べない
日本人はやたら踊り食いや生食が好きな民族で、特に海のモノは無条件で生で食おうとします(虫は加熱しても食べたがらないクセに)。
漫画なんかでは踊り食いの描写もあるらしいですが、命が惜しければ生食は避けましょう。
ホタルイカにはアニサキスと旋尾線虫という寄生虫がいます。特に旋尾線虫の寄生率は高く2~7%程度らしいです。店で販売されている刺身用は冷凍処理で寄生虫リスクを取り除いているとは思いますが、信用できるお店で食べたほうがいいでしょう。
個人で食べるなら加熱推奨です。
参考HP|国立健康危機管理研究機構
STEP2 採取予定を計画せよ!
採取時期
ホタルイカは3月1日が禁漁日です。前述したとおり個人で捕る場合は沖に出るわけではありませんが、そもそも禁漁日以降でないとホタルイカは打ちあがって来ません。
期間的には3月下旬~5月上旬と結構長めですが、実際にホタルイカに会えるかどうかはかなり「運」が絡んできます。
以下のような条件が良いとされています。
✅新月の前後2~3日
✅波が高くない日
✅雨が降らない日
✅21時~3時ごろ
潮、明かり、捕獲のしやすさ等の条件を総合的に判断してということになりますね。自然のことなので、現場に遭遇出来ればラッキーくらいの感覚が良いかもしれません。海系は不確実要素が大きいものです(やはり虫は優秀)。
採取地
富山湾の漁港で捕る方法と浜で捕る方法があります。具体的な場所は敢えて記載しませんので、どうしても興味がある人は自分で調べるか、私に直接聞いてください。デメリットとメリットは以下の通り。
✅漁港
◎長所
ホタルイカが砂を噛まない
海に入らなくていい
×短所
長い網が必要
落ちる危険がある
漁業者の邪魔にならないようにするのが難しい
集団身投げは見にくい
✅砂浜
◎長所
・人が歩き回っているので、入っていきやすい
・短い網でも捕れる
・集団身投げが見れる
×短所
・ホタルイカが砂を噛む
(海中で捕っても、一度打ちあがってる可能性)
・波を被る可能性がある
✅ホタルイカの砂噛みについて
砂浜に打ちあがったホタルイカは砂を吸い込みます。これは内臓に入ってしまうので、調理後に食べるときにジャリっとします。生きてるうちに海水で泳がせたり、調理時に腹を開くことである程度取り除けますが、完璧ではないので、そもそも砂を噛んでいないイカを捕獲したほうが食用には向いてます。
採取法
網で掬って捕ります。打ちあがったもので良ければ素手でも捕れます。
打ちあがったイカは砂を噛みまくっているので、いっぱい捕れる日にはスルーされるらしいです。
捕獲用アイテム
漁港と砂浜で若干装備が異なりますが、今回は私は砂浜に行ったので、その時のアイテムを紹介します。
✅網
2,000円前後のアルミ枠の網を推奨。浜で捕る場合でも2m程度の長さは欲しいところです。漁港ならもっと長いほうがいいでしょう。丸網より角網のほうが使いやすいと思います。
参考商品
※参考商品はあくまでもイメージです。
私が実際に使ったものではありません。
✅バケツ
2つ以上は欲しいです。砂を吐かせるときに1つずつ使います。バケツ自体は家に有るものか百均のものでも問題ないでしょう。私は持っていたコマセバケツを使いました。
✅長靴
結構な長さが必要です。海水は冷たく、浸水すると長期間の待機は出来ません。膝丈まであったほうがいいでしょう。というか胴長(ウェーダー)を用意したほうがいいと思います。砂浜では、深夜帯ほど装備がガチ勢寄りになっていき、胴長持ちは有利そうでした。
✅ヘッドライト
周囲に明かりはなく、暗いのでヘッドライト必須です。明るさの目安として500ルーメンくらいはあったほうがよさそうでした。価格帯は2,000円前後かと思います。
参考商品
※参考商品はあくまでもイメージです。
私が実際に使ったものではありません。
✅手袋
寒いので必須です。濡れないようにゴム手袋が良いでしょう。観察するだけなら軍手でも構いません。
図1.装備一覧
持ち帰り用アイテム
✅クーラーボックス
どのくらい捕るかによりますが、自家消費分くらいであれば、それほど大きなものでなくても構わないと思います。私はアルミのランチボックスのようなものとジップロックを持って行きましたが、同行者はもうちょっとガチ目のクーラーボックスを持っていました。
また、近くのコンビニには発泡スチロール容器と氷が売ってたりします。どうしても急場で必要な場合は購入してもいいでしょう。
✅ゴミ袋
あればなにかと便利です。特にレンタカーなどで移動する場合は車内を汚さないように、道具はゴミ袋で包みましょう。ブルーシートもあればさらに良いでしょう。
割と寒い!
4月なのでそこそこ暖かいだろと舐めていたのですが、かなり寒かったです。そもそも富山は寒い地域ですし、深夜の海なので春の感覚で行くと確実に寒いです。私はヒートテック、フリース、ウィンドブレーカー、ライトダウンの4枚と結構な装備でしたが、寒くて途中で車に戻ったりしました。同行者も結構寒そうでした。
冬場に余ったホッカイロなど持ち込んでも良いと思います。
現地のお店
ホタルイカ掬いは富山の観光資源にもなっているので、現地のホームセンター、果てはコンビニですら用品が売ってたりします。とはいえ売り切れていたり、思ったより高かったりするので、確実に欲しいものが入手できるとは限りません(実際に私が行った時はいい胴長が買えませんでした)。
更に注意点があってホームセンターは20時ごろには閉まります。事前に装備を準備しておくか、現地で購入する場合は早めに富山入りするようにしましょう。
図2.最寄りポイントのコンビニの様子
次回予告
本記事ではホタルイカの生態や道具などについて書きました。後編では実際に私が2025年4/1~4/3に富山に行ってきた様子をお送りいたします。
実際に富山に行ってきてどんな感じだったのか?
果たしてBALはホタルイカを捕れるのか?
ホタルイカを美味しく調理できるのか?
拾い食いの費用対効果はいかほどなのか?
次回『BAL、ホタルイカを捕れず』デュエルスタンバイ!
参考資料
ホタルイカミュージアム体験より
過去の野食リンク
✅植物編
・ノビル(3~5月)
・銀杏(9~11月)
・スベリヒユ(7~9月)
・むかご(表)(10~11月)
・むかご(裏)(食わないほうがいい)
・菜の花(3~4月)
・ヤブカンゾウ(3~4月)
・フキノトウ(2~3月)
✅キノコ編
・毒キノコ(食べてはならない)
✅虫編