- 投稿日:2025/05/29
- 更新日:2025/09/29

はじめに
野食とは?
野外で食料を調達して食べることを「野食(やしょく)」と言います。
野食は
・食に対する理解が深まる
・サイエンスに対する理解が深まる
・地球と自分の繋がりを直に感じられる
・最終的に生きている実感を得られる(食育)
まさしくリベラルアーツ(教養的)な学問です。
趣味として非常にオススメ出来ます。
STEP1 マルベリーについて調査せよ
今回の主役
今回の対象物はマルベリーです。桑(くわ)の実とも言います。品種がいくつかありますが、日本では野生のものや養蚕時代の名残で野生化してしまったものなどがあります。今回、私が採ってきたのは多分ヤマグワです。今回はクワ属の果実を総称してマルベリーと表記します。
マルベリー採取における注意点
野食系では毎度言ってますが採集地の注意点として
✅私有地に無断で入らない
は絶対に守ってください。
今回は(も)近所の河原で採ってきました。
近所の河原には何でもあります。
みなさんも行きつけの近所の河原をサーチしましょう。
採取時に似た植物
これも野食系では毎度言ってますが
✅よくわからないものは食べない(ちゃんと同定する)
✅自己責任で食べる
は必ず守ってください。
クワ属であれば問題なく食せると思いますが、最終的には自己責任となります。最近は栽培品種などもあるので、野外のものが心配であれば(野食からは趣旨が逸れますが)栽培したり、購入してもいいでしょう。
私個人の話をするのであれば、沖縄に生息していた時分にはおそらくシマグワと呼ばれる品種の果実を食しましたが、ヤマグワとの差異はほとんどないと思います。
マルベリーの栄養素
マルベリーには多くのミネラルやビタミンが含まれています。また、よく似たフルーツであるラズベリーと比較しても「カルシウム」「鉄分」「ビタミンC」などが豊富に含まれています。
これらの栄養素は美肌効果やアンチエイジングに効果があるといわれており、肌や粘膜を健康に保ちます。
また、アントシアニンも豊富に含まれており、眼病対策にもなるそうです。
以上から、マルベリーは今注目のスーパーフードと言えるでしょう♪
・・・・などと意識の高い文章を書いてみたが、そんな戯言は今すぐゴミ箱にダンクシュートすべきだ。野食家たるもの、そこにタダで食べられる食材があれば、例え非効率であることを承知していても(※1)、採って食べずにはいられない。世界との繋がり、生きている実感を得るために食べているのである。
決して「最近お肌の調子が気になってきたから、天然で体にも良さそうなマルベリーを食べるの♪」などと言っているような野食家の風上にも置けぬような人物になってはいけない(※2)。
※1 これとか
※2 BAL個人の感想及び偏見である
STEP2 マルベリーを採取せよ
採取時期
5月~6月ごろです。野食は季節の移り変わりを感じることも出来ますが、マルベリーは初夏の訪れを感じることが出来、味も初夏らしいスッキリとした味わいです。採集地の選定と同定さえ出来てしまえば、割と初心者向けではあるので、野食ビギナーにもオススメです。
採取地
河原や山道などに生えています。雑木林などもねらい目です。完全な山というよりは適度に人の手が入っている環境の方が、良く生えていると思います。私は例によって例のごとく近所の河原で採取しました(コイツいつも近所の河原で採取してんな)。
図.1 マルベリーのロケーション
図2.収穫前のマルベリー(黒いヤツ)
採取法
素手で採れます。赤い実のほうが美味しそうに見えるかもしれませんが、黒い実が収穫適期です。
熟した果実ほど、もぎやすいです。というか、場合によっては触れただけでポロっと落ちます。むかご(表)と同じような感じですね。傘などを逆に開いて、落ちてくる実を回収しても良いかもしれません。
後は適当な袋や籠を持っていきましょう。採取時に手が果汁で黒紫になるのが気になる人は手袋などをしてください。とはいえ、洗えば簡単に落ちるので、あまり気にしなくても良いかもしれません。
注意点
マルベリーは美味しさ故に、ヒト以外の同業者とバッティングします。同業者の例として、「アリ」「カメムシ」「ハチ」などがいます。アリやカメムシは取り除けばいいのですが、ハチにはそこそこ注意してください。私はアシナガバチとしか遭遇したことがないですが、スズメバチがいてもおかしくないと思います。ハチがいた場合は、先客に敬意を表しておとなしく諦めてその場を去りましょう。
STEP3 マルベリーを下処理せよ
下処理
不要です。なんなら、採ったその場で食べられます。とはいえ虫や汚れがついてたりするのが気になる人は家に持ち帰って洗ってください。生食に抵抗がある人は加熱しましょう。
図3.収穫後のマルベリー。軸がついているので気になる人は事前に取るか、食べるときに取りながら食べる。私はあまり気にせずに一緒に食べるタイプである。
FINALSTEP マルベリーを実食せよ
マルベリーの代表的な調理方法は
✅生食
✅コンポート
✅ジャム
あたりです。昔は下校中の小学生のオヤツにもなっていたようなので、やはり生食が一番ポピュラーでしょうか。とはいえ、野食家としてはむやみに生食を推進は出来ないので、火を通した調理も紹介しておきます。
今回はコンポートを作りました。
マルベリーは良く言うと「優しい甘味と爽やかな酸味が特徴」です。
しかし、悪く言うと「甘味やパンチに欠けて雑草っぽい」となります。
コンポートは控えめな甘味を砂糖で補いつつ、マルベリーのベリー感はそのままなので、万人受けする甘味と言えます。
材料
マルベリー・・・100g
砂糖・・・30g
水・・・少々
ラム酒・・・大さじ1(あれば)
レモン汁・・・大さじ1(あれば)
工程
1.マルベリーは洗って水気を切った後に砂糖を馴染ませる
(軸が気になる人は取る)
2.フライパンへ少々の水とマルベリーを投入し加熱する
3.水分にトロミが出てきたらラム酒とも加えて加熱する
4.アルコールを飛ばした後にレモン汁を加えて完成
図4. マルベリーのコンポート
ホットケーキやヨーグルトと合わせるとオシャレ且つウマイ
個人的オススメ度
同定のしやすさ ★★★★☆
採取のしやすさ ★★★☆☆
旬の長さ ★★☆☆☆
調理のしやすさ ★★★★★
クセのなさ ★★★★☆
美味しさ ★★★★★
採取面
群生地を見つければ採取はかなり簡単な部類。ただし、木が時には10m以上成長したり、行政管理区域なら剪定されたりとで、果樹ゆえの特殊事情も絡んでくる。
調理の手間面
ダントツで楽な部類。野食感を出すなら、生食。甘味が物足りなかったり日持ちさせたいならジャムやコンポートに。
食味面
食味はクセはない。野イチゴとかの系統にあたる。しかし、若干の雑草感と甘味の少なさがあるので、現代人にはやや物足りないかもしれない。食感は柔らかく食べやすいが、少しだけプチプチとしている。この辺りも野イチゴ感がある。
その他
私にはあまりない感覚だが、見た目が「虫っぽい」という人がたまにいる。私が職場に持って行ったときに虫と間違えられたことがある。とはいえ分類学上は2者間においては異質であり同質である。3種以上の比較の場合において初めて近縁であるか否かの議論が出来るわけなので、虫としても良いだろう(良くない)。
ちなみに本当に虫がついている場合は稀に良くある(特にアリ。オオシワアリあたりか?)。タンパク源として気にせずに食べても良いが、気になる人は洗ったり加熱したりしよう。
過去の野食リンク
✅植物編
・ノビル(3~5月)
・銀杏(9~11月)
・スベリヒユ(7~9月)
・むかご(表)(10~11月)
・むかご(裏)(食わないほうがいい)
・菜の花(3~4月)
・ヤブカンゾウ(3~4月)
・ワラビ(4~6月)
✅キノコ編
・毒キノコ(食べてはならない)
✅虫編
✅魚介類編